結論: 出国後2年以内に請求でき、支給時に20.42%が引かれるが、申告で戻る場合がある
日本国籍がない人が厚生年金保険に6か月以上加入し、資格を失って日本を出国したときは、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求できます。支給額は、加入期間の平均標準報酬額に、加入月数に応じた支給率をかけて決まります(日本年金機構、更新日2026年4月1日)。
非居住者が受ける厚生年金保険の脱退一時金は、支給のときに20.42%の税金が源泉徴収されます。ただし「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を税務署に出すと、源泉徴収された税金の還付を受けられる場合があります。会社から受ける退職金の非居住者向けの税の扱いは出国後に受け取る退職金の税金に整理しています。
請求できる人の要件
日本年金機構が示す、厚生年金保険の脱退一時金の支給要件は次の7つです。すべてに当てはまる必要があります。
- 日本国籍を有していない
- 公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない
- 厚生年金保険(共済組合等を含む)の加入期間の合計が6月以上ある
- 老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない
- 障害厚生年金(障害手当金を含む)などの年金を受ける権利を有したことがない
- 日本国内に住所を有していない
- 最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない(資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していないこと)
国民年金に加入していた期間があるときは、国民年金の脱退一時金の要件(保険料納付済期間等が6月以上あることなど)が別にあります。このページは厚生年金保険の脱退一時金を扱います。
支給額の決まり方
支給額は「被保険者であった期間の平均標準報酬額×支給率」です。平均標準報酬額は、2003年(平成15年)4月より前の標準報酬月額に1.3をかけた額と、2003年4月以後の標準報酬月額と標準賞与額を合計した額を足し、全体の被保険者期間の月数で割った額です。
支給率は、最終月(資格を失った日の属する月の前月)の属する年の前年10月の保険料率(最終月が1月〜8月なら前々年10月の保険料率)に2分の1をかけた率に、被保険者期間の区分ごとの数をかけた率です。小数点以下1位未満は四捨五入します。最終月が2021年(令和3年)4月以降の場合の支給率は次のとおりです。
| 被保険者であった期間 | 支給率 |
|---|---|
| 6月以上12月未満 | 0.5 |
| 12月以上18月未満 | 1.1 |
| 18月以上24月未満 | 1.6 |
| 24月以上30月未満 | 2.2 |
| 30月以上36月未満 | 2.7 |
| 36月以上42月未満 | 3.3 |
| 42月以上48月未満 | 3.8 |
| 48月以上54月未満 | 4.4 |
| 54月以上60月未満 | 4.9 |
| 60月以上 | 5.5 |
最終月が2021年3月以前の場合は、36月(3年)を上限として計算されます。加入が60月を超えても、計算に使う月数は60月までです。
計算例: 平均標準報酬額30万円・加入36月の場合
仮に平均標準報酬額が30万円、加入期間が36月(最終月が2021年4月以降)とします。36月以上42月未満の支給率は3.3なので、脱退一時金は30万円×3.3=99万円です。この例の源泉徴収は、99万円×20.42%=202,158円です。数字は説明のための仮定で、実際の平均標準報酬額と支給率は日本年金機構が決めます。
支給時にかかる税金
日本年金機構の請求案内は、脱退一時金にかかる所得税を次のように示しています。
- 非居住者が支給を受ける厚生年金保険の脱退一時金は、支給の際に20.42%の税金が源泉徴収されます。
- 国民年金の脱退一時金は源泉徴収されません。
- 「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を税務署に提出することで、源泉徴収された税金の還付を受けられる場合があります。
所得税法第31条第1号は、厚生年金保険法などの規定に基づく一時金で政令で定めるものを、退職手当等とみなすと定めています。国税庁の「退職所得の選択課税の記載例」には、出国後に受け取った退職金の例のほかに、厚生年金の脱退一時金の例(記載例②)があります。選択課税の計算の仕組みは出国後に受け取る退職金の税金で確認できます。
還付を受けるための手続き
- 出国前に、日本国内の最終の住所地または居所地を管轄する税務署へ「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出します。納税管理人の資格は、日本に住所地または居所地を有すること以外に特にありません。
- 届出書を出さずに帰国したときは、申告書と一緒に提出します。
- 支給の年の翌年1月1日以後に、「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を提出します。その年中に退職手当等の総額が確定したときは、確定した日以後に出せます(国税庁の記載例)。
- 脱退一時金の送金と同時に届く「脱退一時金支給決定通知書」の原本は、納税管理人に送ります。
申告書や届出書の様式は国税庁のホームページに載っています。手続きに迷うときは税務署に確認してください。
このページで扱わないこと
国民年金の脱退一時金の金額、社会保障協定による年金加入期間の通算、居住地国での課税、個別の事情での還付額の計算は扱いません。請求書の書き方や添付書類は、日本年金機構の案内で確認してください。
よくある質問
厚生年金の脱退一時金は、誰がいつまでに請求できますか。
日本国籍がない人が、厚生年金保険に6か月以上加入し、資格を失って日本を出国した場合に、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求できます。老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていないことなどの要件もあります(日本年金機構)。
脱退一時金はいくらもらえますか。
平均標準報酬額に支給率をかけた額です。加入期間が36月以上42月未満なら支給率は3.3、60月以上なら5.5です(最終月が2021年4月以降の場合)。たとえば平均標準報酬額が30万円で加入が36月なら、30万円×3.3=99万円です。
脱退一時金には、税金がかかりますか。
非居住者が受ける厚生年金保険の脱退一時金は、支給のときに20.42%が源泉徴収されます。国民年金の脱退一時金は源泉徴収されません(日本年金機構)。源泉徴収された税金は、退職所得の選択課税の申告で還付を受けられる場合があります。
源泉徴収された税金を取り戻すには、何が必要ですか。
「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を税務署へ提出します。出国前に、日本国内の最終の住所地または居所地を管轄する税務署へ「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を出しておく必要があります。出さずに帰国したときは、申告書と一緒に提出します。
日本の会社の退職金も受け取る場合は、まとめて申告しますか。
国税庁の記載例では、選択課税の対象は、その退職を事由としてその年中に支払を受ける退職手当等の総額とされています。脱退一時金と会社の退職金を1つの申告にまとめるかどうかは、このページでは判断しません。税務署に確認してください。
出典
- 日本年金機構「脱退一時金の制度」(nenkin.go.jp)。確認日2026-10-13
- 日本年金機構 脱退一時金請求書の案内(脱退一時金にかかる所得税)(nenkin.go.jp)。確認日2026-10-13
- 国税庁 退職所得の選択課税の記載例(nta.go.jp)
- e-Gov法令検索 所得税法第31条(laws.e-gov.go.jp)