出国後に受け取る退職金の税金(20.42%源泉徴収と選択課税)

海外へ移住して日本の非居住者になった後に、日本の勤務先から退職金を受け取る場合の税の扱いを整理します。通常の退職所得控除が使えるのか、選択課税とは何かを、所得税法と国税庁の資料で確認します。

結論: 原則は20.42%の源泉徴収で課税が終わり、選択すれば居住者並みの計算になる

非居住者が国内源泉所得にあたる退職手当等の支払を受ける場合、退職手当等の金額の20.42%(所得税と復興特別所得税)が源泉徴収され、原則としてこの源泉徴収で課税関係が終わります(源泉分離課税。国税庁「退職所得の選択課税の記載例」)。国税庁No.2884でも、非居住者への給与や退職手当等の源泉徴収税率は20.42%と示されています。

この方式では、居住者の退職金のように退職所得控除額を引いて2分の1にする計算はされません。そのため、同じ金額でも居住者として受け取るより税が重くなる場合があります。重くなる場合に使えるのが「退職所得の選択課税」です。

国内源泉所得になる退職金の範囲

所得税法第161条第1項第12号ハは、退職手当等のうち「居住者であった期間に行った勤務その他の人的役務の提供」に基因するものを国内源泉所得としています(内国法人の役員として非居住者であった期間に行った勤務のうち政令で定めるものも含みます)。日本で働いていた期間に対応する部分が日本で課税される対象です。

退職所得の選択課税とは

所得税法第171条は、非居住者が上の退職手当等の支払を受けるとき、その支払の基因となった退職を事由としてその年中に支払を受ける退職手当等の総額を、居住者として受けたものとみなして退職所得の規定(第30条)と税率(第89条)を適用した場合の税額で課税されることを選べると定めています。

項目源泉徴収のまま(原則)選択課税
税の計算退職手当等の20.42%居住者として受けたものとみなした税額
退職所得控除・2分の1使わない第30条により使う
手続支払者の源泉徴収で完結「退職所得の選択課税の申告書」を税務署へ提出

選択課税の対象になる退職手当等の総額は、国内源泉所得の部分だけでなく、その退職を事由としてその年中に支払を受ける退職手当等の総額です。国税庁の記載例は、国内源泉所得の金額だけを記載するのではないと注意しています。

選択課税の申告の流れ

  1. 支払を受けた年の翌年1月1日以後に、「退職所得の選択課税の申告書」を、納税地を所轄する税務署へ提出します。その日より前に退職手当等の総額が確定した場合は、確定した日以後に出せます(国税庁の記載例)。
  2. 申告書は、国税庁の記載例の指示に沿って作成します。
  3. 源泉徴収された税額が選択課税の税額より多ければ、差額の還付を受けられる場合があります。実際の金額は申告書の計算で決まります。

国税庁の記載例には、出国後に受け取った退職金のほか、厚生年金の脱退一時金の例もあります。海外在住のまま申告する場合の納税管理人や書類の送り方は、記載例と税務署の案内で確認してください。

条約による税率の軽減

国税庁No.2884は、非居住者等への源泉徴収について、租税条約の規定による税率の軽減または免除があることを示しています。居住地国との条約の内容で扱いが変わる場合があるため、勤務先の経理担当か税務署へ確認してください。

このページで扱わないこと

居住者か非居住者かの判定そのもの、居住地国での課税、出国前に支払を受ける居住者の退職金は扱いません。居住者として受け取る場合の手取りは手取り計算、受給申告書は退職所得の受給に関する申告書、控除額は退職所得控除額の早見表で確認できます。

所得税法第161条・第171条(e-Gov法令検索)、国税庁タックスアンサーNo.2884と「退職所得の選択課税の記載例」にもとづく一般的な説明です。居住者・非居住者の判定、租税条約の適用、還付の有無は個別の事情で変わり、断定できません。税理士または税務署へ確認してください。

出典