退職金前払い制度が給与所得になる理由と税負担の違い(国税庁質疑応答事例)

国税庁の質疑応答事例の原文で、前払い制度の退職金相当額の所得区分と、退職所得控除が使えない点を確認します。

結論:前払い分は給与所得、据え置いた過去分は退職所得

国税庁の質疑応答事例(所得税)は、退職金前払い制度に移行する場合の一時金の所得区分を、次のとおり示しています。

給与所得になる理由

国税庁の回答は、理由を3点あげています。

  1. 前払い制度で分割支給される退職金相当額は、退職により一時に支払を受ける給与ではないので、退職所得には当たらない。
  2. 前払い制度への移行は「新たな退職給与規程の制定」とはいえない。このため、新規程の制定前の勤続期間に係る退職手当等を退職所得として扱う所得税基本通達30-2(1)は使えない。
  3. 移行日前の過去の勤務期間に係る一時金は、実際に退職するまで据え置いて支給することもできる。そのため、移行時に精算する必要があるとは認められない。

退職所得になる場合との税負担の違い

退職所得は、国税庁タックスアンサーNo.1420によると、次の式で計算します。

(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得の金額

退職所得控除額は、勤続20年以下なら「40万円 × 勤続年数」(80万円に満たない場合は80万円)です。勤続20年なら800万円になります。退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。

項目給与所得になる前払い分退職所得になる据え置き分
退職所得控除使えない使える
2分の1の計算ないある(短期退職手当等などの例外あり)
他の所得との関係給与所得として、ほかの所得と合わせて計算原則として分離して計算

給与所得になる前払い分には、退職所得控除も2分の1の計算も使えません。毎月の給与と同じ扱いで、所得税と住民税の対象です。前払い制度を選ぶと、同じ額を退職時に受け取る場合より税負担が重くなる可能性があります。

確認しておくこと

退職金を受け取る場合の手取りを試算する

退職時にまとめて受け取る場合の税引後の手取りは、手取り計算で試算できます。退職所得控除の仕組みは退職所得控除の早見表で確認できます。

国税庁 質疑応答事例(所得税)「企業内退職金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与(いわゆる退職金前払い制度へ移行する目的で廃止する場合)」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)と、タックスアンサーNo.1420(確認日2026-10-08)にもとづく一般的な制度の紹介です。個別の税務相談や申告の代行は行いません。

出典