退職時の誓約書(秘密保持・競業避止)の確認点と退職金との関係

退職時に出される秘密保持や競業避止(同業他社への就職や開業の制限)の誓約書について、経済産業省と厚生労働省の資料にある確認の観点を6項目で整理し、退職金の不支給・減額との関係を説明します。確認点は競業避止が中心で、秘密保持の条項そのものの読み方は扱いません。有効か無効かの判定はしません。

経産省の資料にある6つの確認点

経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」の参考資料5(確認日2026-10-15)は、50以上の判例をもとに、競業避止義務契約の有効性を判断するときのポイントを次の6つにまとめています。退職後の競業制限は職業選択の自由を侵害し得るため、制限的に解されているとも書かれています。

確認点資料に書かれている内容誓約書で見る箇所
1. 会社に守るべき利益があるか不正競争防止法上の「営業秘密」に限られず、それに準じる独自のノウハウや顧客との人的関係も対象になり得る何を守る目的の書面か
2. 従業員の地位従業員すべてや、特定の職位の者すべてを対象にするだけの規定は、合理性が認められにくい。形式的な役職より、守るべき情報に実際に接していたかが見られる自分の仕事が対象になる理由があるか
3. 地域的な限定限定がないことだけで否定されるわけではなく、会社の事業地域や禁止行為の範囲と合わせて判断される地域の定め
4. 存続期間1年以内は肯定的に捉えられる例が多く、近年は2年を否定的に捉えた判例もある。年数だけでは決まらない退職後何か月・何年か
5. 禁止される行為の範囲競業企業への転職を一般的・抽象的に禁じるだけでは合理性が認められないことが多い。業務内容や職種を限定していると肯定的に見られやすい「競合他社」の定義、禁止する職務や行為
6. 代償措置代償措置と呼べるものが何もない場合は有効性が否定されることが多い。ただし代償措置の有無だけで決まるわけではない手当や退職金の上乗せなど、制限に見合う対価

同じ資料は、判例の個別性が強いため、どのような書き方なら有効になるかは一概に言えないと注記しています。この表の項目に当てはまるかどうかで、有効・無効を決められるわけではありません。

署名の前に書面で確かめる点

上の6項目を、手元の誓約書に当てはめる順番にすると次のようになります。公的資料に書かれた観点を並べたもので、書き方の良し悪しの断定ではありません。

退職金の不支給・減額との関係

厚生労働省の個別労働紛争の事例集(あっせん事例19)は、退職後の競業を理由とする退職金の不支給について、次のように整理しています。

一方、厚生労働省「確かめよう労働条件」の裁判例解説は、最高裁の三晃社事件(昭和52年8月9日)を紹介しています。同業他社へ再就職した社員の退職金を、自己都合退職の場合の半額とする退職金規則は、退職金に功労報償的な性格もあることから、合理性のない措置とはいえないとした判断です。つまり、規程の内容によっては退職金が減ることがあります。

退職金の不支給・減額が認められる条件の全体は懲戒解雇と退職金の不支給で整理しています。競業を理由にする場合も、規程に書かれているかどうかが出発点になります。

経済産業省と厚生労働省の公開資料(2026-10-15確認)にもとづく、一般的な説明です。個別の誓約書が有効か、署名すべきか、退職金が減るかどうかの判断は行いません。今回確認した資料には、退職時の誓約書への署名義務の有無を直接定めた記述は見つかりませんでした。内容に不安があるときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや弁護士へ確認してください。

退職前後に出てくる書類の全体像は退職時期別の提出書類一覧で確認できます。

よくある質問

競業避止の誓約書が有効かどうかは、何で判断されますか。

経済産業省の資料では、判例上のポイントとして、会社に守るべき利益があるか、従業員の地位、地域的な限定、存続期間、禁止される競業行為の範囲、代償措置の有無が挙げられています。ただし判例は個別性が強く、どのような書き方なら有効になるかは一概に言えないと注記されています。

競業避止の期間は何年までなら認められますか。

経済産業省の資料では、1年以内の期間は肯定的に捉えられている例が多く、近年は2年の期間を否定的に捉えた判例も見られるとされています。ただし年数だけで決まるのではなく、労働者の不利益の程度や守るべき利益との関係で判断されます。

競業避止の誓約書に違反すると、退職金は出なくなりますか。

厚生労働省の資料では、退職後の競業を理由に退職金を不支給・減額できるのは、就業規則や退職金規程に明確な規定があり、長年の功労を打ち消すほどの著しい背信行為がある場合に限られるとされています。誓約書だけで自動的に不支給になるとは書かれていません。

同業他社に転職すると退職金を半額にする規程は有効ですか。

厚生労働省の「確かめよう労働条件」の裁判例解説によると、最高裁(三晃社事件、昭和52年)は、同業他社へ再就職した社員の退職金を自己都合退職の半額とする退職金規則について、退職金に功労報償的な性格もあることから合理性がないとはいえないと判断しました。個別の事情で結論は変わるため、自分の場合は労働局や弁護士へ確認してください。

誓約書に署名しないといけませんか。

今回確認した経産省・厚労省の資料には、退職時の誓約書への署名義務の有無を直接定めた記述は見つかりませんでした。署名を求められたときは、書面の内容と就業規則を確認したうえで、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや弁護士へ相談してください。

出典