結論:実質的な制度の改変による精算なら退職所得、前払い制度への移行なら給与所得
引き続き勤務する人に、退職金制度を改める際の精算として一時金を払う場合、所得区分は制度の中身で分かれます(確認日 2026-10-12)。
- 新たに退職給与規程を制定したり、中小企業退職金共済制度や確定拠出年金制度への移行など相当の理由で規程を改正したりして、制定・改正前の勤続期間に係る退職手当等として支払う給与は、あとの退職手当等の計算にその勤続期間を一切加味しない条件なら退職所得として扱われます(所得税基本通達30-2(1))。
- 退職金前払い制度への移行に伴い、引き続き勤務する使用人に払う一時金は、国税庁の質疑応答事例で給与所得とされています(所得税法第28条第1項)。ただし、移行日前の過去勤務期間に係る一時金を、実際に退職するまで据え置いて支給する場合は退職所得です。
通達の原文で確認する条件
所得税基本通達30-2(1)の対象は、新たに退職給与規程を制定した場合、または中小企業退職金共済制度や確定拠出年金制度への移行等、相当の理由で従来の退職給与規程を改正した場合に、制定・改正前の勤続期間に係る退職手当等として使用人に支払われる給与です。これに次の注がついています。
- 上記の給与は、合理的な理由による退職金制度の実質的改変により精算の必要から支払われるものに限られます。たとえば、使用人の選択によって支払われるものは、これに当たりません。
- 使用者が上記の給与を未払金等として計上した場合、その給与は現に支払われる時の退職手当等とします。2回以上に分割して支払われるときは、所得税法施行令第77条(退職所得の収入の時期)の適用があります。
通達30-2の本文では、あわせて、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上、その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しないことが条件です。また、この扱いで退職手当等とされた給与の勤続年数は、その給与の計算の基礎とされた勤続期間の末日に退職したものとして計算します(30-8)。
給与所得になる例:退職金前払い制度への移行
国税庁の質疑応答事例(所得税)は、退職金前払い制度へ移行する目的で退職金制度を廃止し、移行日前の過去勤務期間に係る退職金相当額を打切り支給する場合について、次のように回答しています。
- 退職金前払い制度への移行は、新たな退職給与規程の制定に当たらない。
- 前払い制度で分割支給される退職金相当額は、退職により一時に支払を受ける給与ではないので退職所得に当たらない。
- 移行日前の過去勤務期間に係る一時金は退職するまで据え置いて支給することもできるので、精算の必要があるとも認められない。
- したがって、引き続き勤務する使用人に払う一時金は給与所得となる。
この事例の詳しい内容は、退職金前払い制度が給与所得になる理由と税負担の違いにまとめています。
2つの場合の違い
| 項目 | 退職所得とされる例(30-2(1)) | 給与所得とされる例(質疑応答事例) |
|---|---|---|
| 制度の改変 | 退職給与規程の制定、または中小企業退職金共済・確定拠出年金への移行など相当の理由による改正 | 退職金前払い制度への移行 |
| 一時金の位置づけ | 制定・改正前の勤続期間の精算 | 精算の必要があるとは認められない |
| 退職所得控除 | 使える | 使えない |
確認しておくこと
- 国税庁の通達と質疑応答事例は、書かれた条件を前提にした一般的な説明です。個別の事案では、異なる課税関係になることがあります。
- 自分の会社の制度変更が、どの型に当たるかは、会社の説明資料と改正後の退職金規程で確認してください。支払を受ける側が一時金を受け取るかどうかを選べる形だと、30-2(1)の注にあるとおり退職所得として扱われない場合があります。
- 個別の適用可否は、税務署または税理士に確認してください。このページは一般的な制度の説明で、個別の税務判断ではありません。
退職所得になった場合の税額を試算する
退職所得になる場合の税引後の手取りは、手取り計算で試算できます。退職所得控除の金額は退職所得控除の早見表で確認できます。定年後も引き続き働く人への打切り支給は、定年後に再雇用で働く人の退職金の所得区分で確認できます。
国税庁 所得税基本通達 法第30条《退職所得》関係 30-2、30-8、質疑応答事例(所得税)「企業内退職金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与(いわゆる退職金前払い制度へ移行する目的で廃止する場合)」(令和7年8月1日現在)の原文を2026-10-12に確認して作成しています。