結論:条件を満たす打切り支給は退職所得として扱われる
定年に達したあとも引き続き勤務する人に、定年前の勤続期間に係る退職金を支払う場合について、国税庁の通達は次のように定めています(確認日 2026-10-12)。
- いわゆる定年に達した後引き続き勤務する使用人に、その定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与は、退職手当等(退職所得)とする(所得税基本通達30-2(4))。
- ただし、その給与が支払われたあとに支払われる退職手当等の計算に、すでに払った分の勤続期間を一切加味しない条件で支払われるものに限られます(30-2の本文)。
- 支払うのが退職金ではなく、退職に際して支払われる賞与と同じ性質のものであれば、退職手当等に当たりません(30-1)。
通達の原文で確認する要点
所得税基本通達30-2は、引き続き勤務する役員や使用人に退職手当等として一時に支払われる給与のうち、次の条件を満たすものを、30-1にかかわらず退職手当等とするものです。
- その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上、その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件で支払われること。
- (4)にあるとおり、定年に達した後も引き続き勤務する使用人に、定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われること。
この扱いは、退職の事実が形式的にはなくても、定年という区切りで勤続期間を精算するものを退職所得とする考え方です。定年後に新しい労働条件で働くことを、会社がどのような制度で位置づけているかによって、当てはまるかどうかが変わります。
定年を延長した場合の文書回答
通達30-2(5)は、労働協約等を改正して定年を延長した場合に、延長前の定年に達した使用人へ、その定年前の勤続期間に係る退職手当等として支払う給与で、支払をすることに相当の理由があると認められるものを退職手当等とします。国税局の文書回答には、この(5)を前提にしたものがあります。
- 高松国税局(平成30年3月6日回答)「定年を延長した場合にその延長前の定年に達した従業員に支払った退職一時金の所得区分について」:照会に係る事実関係を前提とする限り、照会者の見解のとおりで差し支えないとされています。
- 東京国税局(令和5年6月26日回答)「定年延長に伴い打切支給の退職金の支給を受けた従業員が、定年延長期間中に確定給付企業年金から支給を受ける選択一時金の退職所得該当性について」:照会に係る事実関係を前提とする限り、照会者の見解のとおりで差し支えないとされています。
どちらの回答にも、事実関係が異なる場合や新たな事実が生じた場合は、回答と異なる課税関係が生ずることがある、また回答は国税局としての見解で申告内容等を拘束しない、との付記があります。
確認しておくこと
- 再雇用という言葉だけでは、通達の「定年に達した後引き続き勤務する使用人」に当たるかどうかは決まりません。会社の就業規則と退職金規程で、定年時に退職金を精算するのか、再雇用後の勤続期間を通算するのかを確認してください。
- 定年時に払った分の勤続期間を、再雇用後に退職するときの退職金の計算に加味する制度だと、30-2の条件に当たらない可能性があります。
- 支払が遅れて未払金として計上された場合や、支払を分割する場合は、退職手当等の収入の時期の扱いが別に定められています。
- 個別の適用可否は、税務署または税理士に確認してください。このページは一般的な制度の説明で、個別の税務判断ではありません。
退職所得になった場合の税額を試算する
退職所得になる場合の税引後の手取りは、手取り計算で試算できます。退職所得控除の金額は退職所得控除の早見表で確認できます。制度を廃止して打切り支給する場合の扱いは、退職金制度の廃止と打切り支給の所得区分にまとめています。
国税庁 所得税基本通達 法第30条《退職所得》関係 30-1、30-2、国税局の文書回答事例(高松国税局 平成30年3月6日、東京国税局 令和5年6月26日)の原文を2026-10-12に確認して作成しています。個別の事案の課税関係は、これらと異なることがあります。