結論: 1年間の贈与の合計が110万円を超えると贈与税がかかる
退職金を受け取ったあと、子や孫へ資金を渡す場合、贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つです。暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を引いた残りに贈与税がかかります。合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です(国税庁No.4402)。
贈与税は、贈与を受けた人(子や孫)が、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに申告と納税をします。渡した側ではなく、受け取った側の税金です。
贈与税がかからない場合の主なもの
| 場合 | 国税庁の説明 |
|---|---|
| 1年間の合計が110万円以下 | 暦年課税の基礎控除額110万円以下なら贈与税はかからない(No.4402) |
| 生活費・教育費 | 扶養義務者から、生活費や教育費に充てるために取得した財産で通常必要と認められるものは非課税。必要な都度直接充てるものに限り、預金や株式・不動産の購入資金に充てた場合は課税(No.4405) |
| 住宅取得等資金 | 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、一定の要件を満たすもの(No.4405・No.4508) |
生活費の範囲には、治療費や養育費などの子育てに関する費用が含まれ、教育費は学費・教材費・文具費などです(国税庁No.4405)。まとまった額を孫の口座へ入れて貯めておくと課税されることがあります。どちらに当たるかは事情で変わるため、迷うときは税務署に確認してください。
住宅取得等資金の非課税: 限度額と期限
令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与で住宅取得等資金を取得し、一定の要件を満たすときは、贈与を受けた人ごとに次の金額まで贈与税が非課税です(国税庁No.4508、令和8年4月1日現在法令等)。
| 住宅の区分 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 省エネ等住宅(省エネ・耐震・バリアフリーのいずれかの基準に適合) | 1,000万円 |
| それ以外の住宅 | 500万円 |
主な要件は次のとおりです。
- 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること(配偶者の父母・祖父母は直系尊属に当たらず、養子縁組をしていれば当たる)
- 贈与を受けた年の1月1日に18歳以上であること
- 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の家屋は1,000万円以下)であること
- 新築・取得した住宅の登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、床面積の2分の1以上が本人の居住用であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに資金の全額を充てて新築等をし、同日までに(または同日後遅滞なく)居住すること
この特例を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、特例を受ける旨を書いた贈与税の申告書に、戸籍謄本や契約書の写しなど一定の書類を付けて税務署へ出す必要があります(No.4508)。要件の全体と省エネ等住宅の基準は国税庁No.4508で確認してください。
110万円を超えたときの税率
基礎控除後の金額に税率をかけます。国税庁No.4408の速算表では、一般税率は基礎控除後の課税価格が200万円以下で10%、300万円以下で15%(控除額10万円)と上がり、3,000万円超で55%(控除額400万円)です。贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の人が直系尊属から受けた贈与には特例税率の速算表を使い、兄弟間・夫婦間などは一般税率の表を使います。表の全体は国税庁No.4408を確認してください。
退職金の手取りとあわせて考える
贈与に回せる金額は、退職金そのものではなく税金を引いた手取りが元になります。手取りは手取り早見表、老後の生活費に何年分当たるかは退職金の手取りは老後の不足額の何年分かで確認できます。援助に回した分だけ、老後に使える額は減ります。
このページで扱わないこと
相続時精算課税の選択、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税、相続税との関係、個別の贈与税額の計算は扱いません。なお、本人が亡くなって遺族が受け取る退職金は贈与ではなく相続税の対象で、非課税枠の考え方は死亡退職金の相続税の非課税枠にまとめています。個別の判断は税理士または税務署へ確認してください。
よくある質問
退職金を受け取ったあと、子や孫にお金を渡すと必ず贈与税がかかりますか。
いいえ。暦年課税では、1年間(1月1日から12月31日)に贈与を受けた財産の合計が基礎控除額110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です(国税庁No.4402)。
退職金が入ったので、孫の学費や生活費を出すと贈与税がかかりますか。
扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で通常必要と認められるものには、贈与税はかかりません。ただし、必要な都度直接これらに充てるものに限られ、預金や株式・不動産の購入資金に充てた場合は課税されます(国税庁No.4405)。
住宅の購入資金を援助すると、いくらまで贈与税がかかりませんか。
令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与で、一定の要件を満たすと、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円まで非課税です。受贈者の年齢・所得・住宅の床面積などの要件があり、翌年2月1日から3月15日までに申告が必要です(国税庁No.4508)。
義理の親(配偶者の親)からの援助でも住宅取得等資金の非課税は使えますか。
国税庁No.4508は、配偶者の父母や祖父母は直系尊属に該当しないとしています。養子縁組をしている場合は該当します。個別の判断は税務署に確認してください。