会社が倒産したとき、退職手当は未払賃金立替払制度の対象
会社が倒産して賃金が払われないまま退職した場合、労働者健康安全機構が事業主に代わって未払賃金の一部を立替払する制度があります。立替払の対象になる未払賃金は、定期賃金と退職手当です。退職手当は、労働協約や就業規則(退職金規程)などにもとづいて支給される退職金をいいます。
立替払を受けられる人
労働者健康安全機構は、次の3つの要件をすべて満たす人としています。
- 労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行っていた事業主に雇用され、企業倒産にともない賃金が支払われないまま退職した労働者であること(パート・アルバイトも含みます。代表権を持つ会社役員や同居の親族は、原則として対象外です)
- 破産手続開始などの申立日(法律上の倒産)、または労働基準監督署長への事実上の倒産の認定申請日の6か月前の日から、2年の間に退職していること
- 未払賃金の額などについて、破産管財人などの証明(法律上の倒産)、または労働基準監督署長の確認(事実上の倒産)を受けていること
事実上の倒産は、中小企業の事業主だけが対象です。破産手続の開始決定、民事再生や会社更生の開始決定など、裁判所の手続がとられる法律上の倒産は、企業の規模を問いません。
立替払される金額と年齢別の上限額
立替払される金額は、未払賃金総額の80%です。ただし、未払賃金総額には退職日の年齢による限度額があり、限度額を超えるときは、限度額の80%が立替払の額になります。
| 退職日の年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払の上限額(限度額の80%) |
|---|---|---|
| 45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
| 30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
| 30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
限度額は、定期賃金と退職手当を合わせた額に対してかかります。機構の例では、退職日の年齢が48歳で、未払賃金が470万円(定期賃金150万円、退職手当320万円)の場合、限度額370万円を超えるため、立替払額は上限の296万円です。退職日の年齢が32歳で、未払賃金が170万円(定期賃金50万円、退職手当120万円)の場合は、限度額220万円を超えないため、170万円の80%の136万円になります。
退職手当が対象になる範囲
- 対象になるのは、退職日の6か月前の日から立替払請求の日の前日までに支払期日が来ている定期賃金と退職手当です。未払賃金の総額が2万円未満のときは対象外です。
- 中小企業退職金共済制度など社外積立の退職金制度に加入していて、そちらから退職金が支払われる場合は、支払額の確定を待って、その額を差し引いた額が立替払の対象になります。
- 賞与、解雇予告手当、賃金の延滞利息、慰労金・祝金名目の恩恵的な給付などは、立替払の対象になりません。
- 請求できる期間は、裁判所の開始決定日または労働基準監督署長の倒産の認定日の翌日から2年以内です。
立替払金の税金
立替払金は、定期賃金分も退職手当分も、租税特別措置法第29条の4により退職所得として扱われ、他の所得と分離して課税されます。請求書の下欄にある「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」に記入があれば、退職所得控除が受けられます。退職所得控除は退職所得控除額の早見表、手取りの試算は手取り計算で確認できます。
確認しておくこと
- 立替払は、未払賃金の全額が戻る制度ではありません。上限は未払賃金総額の80%で、年齢別の限度額もあります。
- 請求の手続は、法律上の倒産か事実上の倒産かで異なります。労働基準監督署または労働者健康安全機構に確認してください。
- 個別の事情にあたるかどうかは、労働基準監督署に確認してください。
労働者健康安全機構「未払賃金の立替払制度の概要」と「未払賃金立替払に関するQ&A」(確認日2026-10-08)にもとづく一般的な制度の紹介です。個別の請求の可否や金額を保証するものではありません。
出典
- 労働者健康安全機構「Ⅰ未払賃金の立替払制度の概要」(johas.go.jp)
- 労働者健康安全機構「Ⅴ未払賃金立替払に関するQ&A」(johas.go.jp)