結論: 賃確法6条の遅延利息は退職手当を除く。退職金は民法の遅延損害金が基本
賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)6条1項は、退職した労働者の「賃金(退職手当を除く。)」が退職日までに支払われなかった場合に、退職日の翌日から支払日までの遅延利息を事業主が支払うと定めています。利率は「年十四・六パーセントを超えない範囲内で政令で定める率」で、年14.6%はこの上限です(e-Gov法令検索)。
条文のかっこ書きで退職手当が除かれているため、退職金の遅れについては、この6条の遅延利息は条文上は適用の対象外です。退職金の遅れには、民法の金銭債務の遅延損害金の規定が使われます。
| 項目 | 賃確法6条の遅延利息 | 民法の遅延損害金 |
|---|---|---|
| 対象 | 退職した労働者の賃金(退職手当を除く) | 金銭の支払いが遅れた債務一般(退職金を含む) |
| 利率 | 年14.6%を超えない範囲で政令が定める率 | 遅滞になった最初の時点の法定利率(現在は年3%)。約定利率がそれより高ければ約定利率 |
| 起算日 | 退職日の翌日(退職後に支払期日が来る賃金は、その支払期日の翌日) | 履行期限(確定期限)が来た時から。期限がなければ請求を受けた時から |
| 根拠条文 | 賃確法6条 | 民法404条・412条・419条 |
賃確法6条の内容
6条1項は、退職の日までに賃金を支払わなかった場合に、退職日の翌日から支払をする日までの日数に応じて、未払額に政令で定める率を乗じた額を遅延利息として支払うとしています。2項は、天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによる遅れには、その事由のある期間は適用しないとしています。退職金の保全措置は別の条文(5条)で、事業主に講ずる努力義務を定めています。
民法の遅延損害金の考え方
- 金銭を支払う債務が遅れたときの損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で定まります(民法419条1項)。債権者は損害の証明が要らず、債務者は不可抗力を抗弁にできません(同条2項・3項)
- 法定利率は年3%で、3年を1期として見直されます(民法404条)。法務省の告示では、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期の法定利率も年3%のままです
- 支払いの期限が決まっていれば、その期限が来た時から遅滞の責任を負います(民法412条1項)。退職金の支払時期は、就業規則・退職金規程に定める事項です(労働基準法89条3号の2)
実際に何%の請求が認められるかは、規程の定め、支払期日、争いの内容で変わります。争いがある場合の扱いは個別に判断が分かれるため、このページでは断定しません。
遅れているときの確認手順
- 就業規則・退職金規程で、退職金の支払時期(退職から何日以内かなど)を確認する。支払時期と時効は退職金の支払時期と請求できる期間で整理しています
- 労働基準法23条は、退職の場合に権利者の請求があれば7日以内に賃金を支払うと定めています。賃金に争いがある場合も、会社は異議のない部分を同じ期間内に支払う必要があります。退職金がこの条文の「賃金」にあたるかは規程の内容によるため、あわせて確認してください
- 支払いを求める日付と金額を書面(内容証明郵便など)に残す。遅延損害金の起算日の判断材料になります
- 支払われないままなら、労働基準監督署の総合労働相談コーナー、弁護士、法テラスへ相談する
このページで扱わないこと
個別の事案で年14.6%や年3%のどれが認められるか、争いがある場合の利率の扱い、請求できる金額の計算は断定できません。受け取った退職金の税は退職所得の源泉徴収票の見方で確認できます。
関連するページ
- 退職金の支払時期と請求できる期間: 退職金の支払時期と時効
- 退職金から差し引くと言われたとき: 退職金と会社への債務の相殺
- 退職金が払われない場合の手続きの比較: 退職金が未払いのときの手続き比較
- 退職後の手続きの一覧: 退職手続きチェックリスト
よくある質問
退職金が遅れたとき、年14.6%の遅延利息を請求できますか。
賃確法6条1項は、退職した労働者の賃金から「退職手当を除く」と定めています。そのため、同条の遅延利息は退職金には条文上は適用されません。年14.6%は、同条で政令が定める率の上限です。個別の請求の可否は、労働基準監督署や弁護士へ確認してください。
退職金の遅延損害金は、民法ではいくらになりますか。
民法419条1項により、遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で定まります。法務省の告示では、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの法定利率は年3%です。約定利率が法定利率を超える場合は約定利率によります。
遅延損害金は、いつから数えますか。
民法412条1項では、確定期限のある債務は期限が来た時から遅滞の責任を負います。退職金の支払時期は就業規則・退職金規程に定める事項なので、規程の定めを確認してください。期限の定めがない場合は、請求を受けた時から遅滞になります(同条3項)。
遅延損害金を請求するのに、損害の証明は必要ですか。
民法419条2項は、金銭債務の遅延による損害賠償について、債権者は損害の証明をすることを要しないと定めています。
出典
- e-Gov法令検索 賃金の支払の確保等に関する法律 第5条・第6条(laws.e-gov.go.jp)
- e-Gov法令検索 民法 第404条・第412条・第419条(laws.e-gov.go.jp)
- e-Gov法令検索 労働基準法 第23条・第89条(laws.e-gov.go.jp)
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」(moj.go.jp)