退職しても、労災保険の給付を受ける権利は変わらない
労災保険法(労働者災害補償保険法)第12条の5には、「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない」とあります(e-Gov法令検索、確認日2026-10-13)。休業補償給付を受けている人が退職しても、その権利は退職を理由には変わりません。実際に支給が続くかどうかは、療養のため労働できない状態が続いているかなどを踏まえて、所轄の労働基準監督署が判断します。
休業補償給付の支給開始日と金額
同法第14条では、休業補償給付は、業務上の負傷または疾病による療養のため労働できず、賃金を受けない日の第4日目から支給されます。額は1日につき給付基礎日額の60%に相当する額です。通勤による負傷または疾病の場合は、名称が「休業給付」になり、同法第22条の2に定めがあります。
休業の最初の3日間は、この給付の対象に入りません。請求の手続きや支給状況は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
労災で休業している間の解雇
労働基準法第19条は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇してはならないと定めています。ただし、使用者が同法第81条の打切補償を支払う場合や、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能になった場合は、この限りではありません。自分から退職するか迷うときや、会社から退職を求められたときは、労働基準監督署などに相談してから決めてください。
失業手当との関係:働けない間は受けられず、受給期間を延長できる
ハローワークの説明では、病気やけがのためすぐには就職できないときは、基本手当(失業手当)を受けることができません。働けない状態が続くときは、受給期間を延長できます。病気・けがなどで引き続き30日以上働けなくなったときは、働けない日数だけ受給期間を延長でき、延長できるのは最長3年間です。申請は、働けなくなった日の翌日以降、早めに行うのが原則で、延長後の受給期間の最後の日までなら可能です。申請先は、住所または居所を管轄するハローワークです。
ハローワークには、働けない理由があるときに基本手当に代えて支給される「傷病手当」もあります。ただし、疾病または負傷について他の法令により行われる類似の給付を受ける日については支給されないとされています。労災保険の休業補償給付を受ける日の傷病手当の扱いは、ハローワークの窓口に確認してください。
退職金への影響
退職金は会社の退職金規程で決まります。労災の休業期間が勤続年数に入るか、減額の対象になるかは会社ごとに違うため、規程を見て確認してください。休職や休業の一般的な扱いは休職・育児休業・介護休業と退職金の勤続年数にまとめています。退職金の手取りは手取り計算で試算できます。
仕事中・通勤中のけがと、私傷病の違い
| 項目 | 仕事中・通勤中のけが(労災) | 私生活のけが・病気(私傷病) |
|---|---|---|
| 使う制度 | 労災保険の休業補償給付(通勤は休業給付) | 健康保険の傷病手当金 |
| 支給の始まり | 休業4日目から(労災保険法第14条) | 加入先の健康保険の案内で確認 |
| 退職後の扱い | 退職で権利は変わらない(同法第12条の5) | 一定の条件を満たす場合のみ継続 |
| 失業手当 | 働けない間は受けられず、受給期間を延長できる | 同じ |
私傷病で退職するときの特定理由離職者の範囲と傷病手当金の条件は、病気・ケガで退職したときの失業手当と傷病手当金で確認できます。
離職理由の区分ごとの給付制限・所定給付日数・入金時期は失業手当はいつ・いくらで確認できます。
よくある質問
労災で休業中に退職すると、休業補償給付はどうなりますか。
労災保険法第12条の5に「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない」とあります。退職しても、休業補償給付を受ける権利そのものは変わりません。支給の可否や期間は、所轄の労働基準監督署の判断によります。
休業補償給付はいつから、いくら支給されますか。
労災保険法第14条では、業務上の負傷または疾病による療養のため労働できず賃金を受けない日の第4日目から支給され、額は1日につき給付基礎日額の60%に相当する額です。通勤による負傷または疾病の場合は「休業給付」という名称で、同法第22条の2に定めがあります。
労災の休業中に退職したら、失業手当は受け取れますか。
ハローワークの説明では、病気やけがのためすぐには就職できないときは基本手当を受けられません。引き続き30日以上働けないときは、働けない日数だけ受給期間を延長でき、延長は最長3年間です。申請先は住所または居所を管轄するハローワークです。
労災で休業している間に会社は解雇できますか。
労働基準法第19条は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間は解雇してはならないと定めています。ただし、使用者が同法第81条の打切補償を支払う場合などは、この限りではありません。個別の事案は労働基準監督署などで確認してください。
労災の休業期間は、退職金の勤続年数に入りますか。
退職金は会社の退職金規程で決まるため、休業期間が勤続年数に入るかどうかは規程で変わります。規程を見るか、会社に問い合わせてください。休職期間一般の扱いは「休職・育児休業・介護休業と退職金の勤続年数」のページで整理しています。
出典
- e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法」第12条の5・第14条・第22条の2(laws.e-gov.go.jp)
- e-Gov法令検索「労働基準法」第19条(laws.e-gov.go.jp)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(www.hellowork.mhlw.go.jp)
- 厚生労働省「休業(補償)等給付・傷病(補償)等年金の請求手続」(www.mhlw.go.jp)