社内預金の退職時の払戻しと退職金の扱い

社内預金(社内貯金)を退職するときにどう返してもらえるか、退職金から差し引かれるのかを、労働基準法18条・賃確法と厚生労働省の通達で整理します。

結論: 社内預金は退職金とは別の、本人の預金です

社内預金は、会社が従業員の貯蓄金を預かって管理するしくみで、労働基準法18条が条件を定めています。給与や退職金のように会社が払うお金ではなく、従業員自身の預金を会社が管理しているものです。そのため、退職するときは、退職金の請求とは別に、社内預金の返還を請求する形になります。

労働基準法18条5項は、会社が貯蓄金を管理している場合に、労働者が返還を請求したときは、遅滞なく返還しなければならないと定めています。この条文は退職の場合を区別していません。退職金から差し引かれるかどうかは、会社が退職金を支払うときの扱いの話で、次の「退職金との相殺」で説明します。

社内預金が認められる条件(労働基準法18条)

e-Govの条文で確認できる内容を表にしました。

条文内容
18条1項労働契約に付随して貯蓄の契約をさせたり、貯蓄金を管理する契約をしたりすることは禁止
18条2項貯蓄金を委託を受けて管理するときは、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面の協定を結び、行政官庁に届け出る
18条3項貯蓄金の管理に関する規程を定め、労働者に周知する
18条4項預金の受入れのときは利子をつける。厚生労働省令で定める利率を下回るときは、その利率の利子がついたものとみなす
18条5項労働者が返還を請求したときは、遅滞なく返還する
18条6項・7項返還の請求に応じないなどの違反があり、管理の継続が労働者の利益を著しく害するときは、行政官庁が管理の中止を命じることができる。中止を命じられた使用者は、遅滞なく貯蓄金を返還する

厚生労働省の通達(昭和52年1月7日基発第4号「社内預金制度の運用について」)は、協定の締結・届出をしないまま会社が従業員の預金を受け入れることは、労働基準法18条2項に違反するとしています。

利子と、会社が倒産したときの備え

利子の下限は、厚生労働省の通知(令和8年7月16日基監発0716第1号)で、令和8年10月から適用される下限利率も引き続き年5厘(0.5%)とされています。協定でこれより低い利率を決めても、下限利率の利子がついたものとみなされます。

賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)3条は、会社が預金の受入れによって貯蓄金を管理するときは、毎年3月31日の受入預金額について、その後1年間の保全措置を講じなければならないと定めています。保全措置とは、金融機関による保証契約など、預金の払戻しを確保するための措置です。労働基準監督署長は、保全措置をとっていない事業主に是正を命じることができます(賃確法4条)。

退職金との相殺はできるか

退職金は賃金にあたり、労働基準法24条1項の「全額払の原則」が適用されます。会社が退職金から何かを差し引くには、本人の自由な意思に基づく同意か、労使協定などの根拠が必要になるのが原則です。会社の貸付金や損害賠償の扱いは退職金と会社への債務の相殺で整理しています。

社内預金は逆の向きです。従業員が会社に預けているお金なので、会社が従業員に払う退職金と合算して精算する場合は、金額の内訳を確認します。次の点を見ると、どちらの話か区別できます。

退職金から社内預金に関する控除があるときの有効性(本人の同意か、協定があるか)は、会社ごとの協定や規程の内容で変わるため、このページでは断定しません。

退職前に確かめる4つの点

  1. 協定と規程があるか: 就業規則や社内の掲示で、貯蓄金管理の協定・規程の有無と、返還の手続きを見ます。
  2. 残高: 通帳や明細で、積立の合計と利子を確認します。
  3. 返還の請求: 退職日を決めたら、返還してほしい日と振込先を、書面やメールなど記録が残る形で伝えます。
  4. 保全措置: 会社の経営が心配なときは、毎年3月31日現在の保全措置がとられているかを、規程や担当部署に尋ねます。

返還されないとき

請求しても返還されないときは、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に相談できます。18条の違反があれば、行政官庁による管理の中止命令の対象になりえます(18条6項)。個別の事案で返還が受けられるかや金額は、このページでは断定できません。労働基準監督署の総合労働相談コーナーや、弁護士・法テラスへ相談してください。

このページで扱わないこと

社内預金の利子の税金(利子所得の扱い)や、個別の会社の協定内容の評価は扱いません。公務員の共済組合の貯金は、労働基準法18条の社内預金とは別の制度です。

関連するページ

労働基準法18条・賃金の支払の確保等に関する法律3条・4条(e-Gov法令検索)、厚生労働省の通達(昭和52年基発第4号、令和8年基監発0716第1号)にもとづく一般的な説明です(確認日: 2026-10-20)。個別の事案の可否は断定できないため、労働基準監督署または専門家へ確認してください。

出典

よくある質問

退職するとき、社内預金はいつ返してもらえますか。

労働基準法18条5項は、労働者が返還を請求したときは、使用者は遅滞なく返還しなければならないと定めています。退職の場合を区別する条文はありません。具体的な振込日は、会社の貯蓄金管理の規程で確認してください。

社内預金は退職金から差し引かれますか。

社内預金は従業員の預金で、退職金とは別のお金です。退職金の明細に控除があるときは、何の項目か、本人の同意や協定があるかを確認します。個別の有効性はこのページでは断定できません。

社内預金の利子はいくらですか。

下限利率は年0.5%(5厘)で、令和8年10月から適用される分も引き続き同じです(令和8年7月16日基監発0716第1号)。協定でこれより低く決めても、下限利率がついたものとみなされます。

会社が倒産したら、社内預金は戻りませんか。

賃確法3条は、会社に毎年3月31日の受入預金額の保全措置を義務づけています。保全措置がとられていれば、金融機関の保証などで払戻しが確保されます。措置の有無は、会社の担当部署に尋ねるか、労働基準監督署に相談できます。

返還を拒まれたときはどこへ相談しますか。

会社の所在地を管轄する労働基準監督署に相談できます。労働基準法18条の違反があるときは、行政官庁が管理の中止を命じることができます。