結論: 退職所得を収入に入れない自治体はあるが、算定は事業主体ごと
島根県(県営住宅)と広島市(市営住宅)は、公営住宅の収入の計算に退職所得を入れないと案内しています。ただし、公営住宅の収入の算定は県・市などの事業主体が行うため、全国で共通とは言えません。このページで確認できたのは下の2例で、「退職所得を収入に含める」と明記した自治体は見つけられていません。
法令の定め(公営住宅法施行令第1条第3号)
施行令は「収入」を、入居者と同居者の過去1年間の所得金額(所得税法の所得の計算に準じて算出した額)の合計から、次の控除額を引いて12で割った額としています。
- 給与所得・公的年金等の雑所得がある人1人につき10万円(その合計が10万円未満ならその額)
- 入居者・同居者以外の同一生計配偶者・扶養親族1人につき38万円
- 70歳以上の同一生計配偶者・老人扶養親族1人につき10万円
- 16歳以上23歳未満の扶養親族1人につき25万円
- 障害者1人につき27万円(特別障害者は40万円)
- 寡婦は27万円、ひとり親は35万円(それぞれ所得から10万円を引いた残りが上限)
就職後1年を経過しないなど、その額を継続的な収入とするのが著しく不適当な場合は、事業主体が国土交通大臣の定めに従って認定した額を使います。この認定の定めの中に、退職所得などの一時的な収入の扱いがあります。
確認できた自治体の案内
| 事業主体 | 案内の内容(原文) | 確認した時点 |
|---|---|---|
| 島根県(県営住宅) | 「所得額に加えないもの(1)退職所得、譲渡所得等一時的な所得」 | 2026-10-29に閲覧(ページに更新日の記載なし) |
| 広島市(市営住宅) | 「収入計算の対象とならない収入」に「退職所得、譲渡所得、一時所得、雑所得その他の所得のうち一時的なもの」 | ページの更新日 2026年1月1日 |
国の答弁書(令和4年4月22日、参議院)も、「公営住宅法施行令第一条第三号の収入の認定の特例について」(昭和36年3月6日付け住発第56号建設省住宅局長通知)に「退職所得、譲渡所得、一時所得、雑所得その他の所得のうち一時的な収入(おおむね一年以内の期間ごとに継続的に得る収入でないもの)」という区分があることに触れています。島根県・広島市の扱いがこの通知にもとづくかは、各ページに書かれていないため確認できていません。
一方、退職後も続く給与・賞与や、国民年金・厚生年金などの年金は、広島市の案内では収入計算の対象です。退職金とは別に、退職後の継続的な収入が基準の判定に使われます。
家賃は収入の区分で決まる
公営住宅の毎月の家賃は、施行令第2条により、家賃算定基礎額に市町村ごとの立地係数、床面積(65平方メートルで割った数値)、経過年数に応じた数値、利便性係数を掛けた額です(近傍同種の住宅の家賃を超える場合はその額)。家賃算定基礎額は、入居者の収入の区分ごとに表で決まっています。
つまり、収入にどの所得を入れるかで区分が変わり、家賃も変わる仕組みです。退職所得を収入に入れない自治体なら、退職金を受け取った年でも、その分で区分が上がることはありません。入れるかどうかは事業主体によるため、入居中の方も申し込む方も、事業主体の募集案内か窓口で確認してください。
このページで扱わないこと
各自治体の収入基準額の一覧、入居の可否の判定、民間賃貸や住宅ローンの扱いは扱いません。住宅ローン控除への影響は退職金を受け取った年の住宅ローン控除、退職後に家賃の負担が重いときの公的な給付は住居確保給付金で整理しています。
自分の条件で試算する
受け取る退職金の手取りは手取り計算、退職所得控除額は退職所得控除額の早見表で確認できます。ほかの制度との関係は次のページにまとめています。
- 制度全体の一覧: 退職金を受け取った年に影響する制度
- 国民健康保険料: 退職金を受け取った年の国民健康保険料
よくある質問
退職金を受け取ると、公営住宅に入れなくなりますか。
一概には言えません。島根県と広島市は、退職所得を収入に入れない(収入計算の対象としない)と案内しています。ただし公営住宅の収入の算定は事業主体(県・市など)ごとに行うため、お住まいの自治体の募集案内で確認が必要です。
公営住宅の「収入」は、所得税の合計所得金額と同じですか。
同じではありません。公営住宅法施行令第1条第3号は、入居者と同居者の過去1年間の所得金額の合計から、扶養親族や障害者などの控除額を引いて12で割った額を「収入」としています。所得税の合計所得金額とは別の計算です。
退職金を受け取った翌年は、家賃が上がりますか。
島根県・広島市の案内のとおり退職所得を収入に入れない自治体であれば、退職金そのものは収入に入りません。ただし、これは自治体ごとの取扱いです。家賃は収入の区分で決まる家賃算定基礎額をもとに算定されるため、入居中の方は事業主体の窓口へ確認してください。
退職後の年金や再雇用の給料は収入に入りますか。
広島市は、国民年金・厚生年金・恩給、給与・賞与などの継続的な収入を収入計算の対象としています。島根県も給与所得や公的年金の所得を所得額の計算に使うとしています。退職後の継続的な収入は、退職金とは別に計算されます。
自分の入居可否は、どこで確かめられますか。
個別の判定は、申し込む公営住宅の事業主体(県・市の住宅担当課や公社)へ確認してください。このページは入居の可否を判定するものではありません。
出典
- e-Gov法令検索 公営住宅法施行令第1条・第2条(laws.e-gov.go.jp)
- 島根県「県営住宅の収入基準」(pref.shimane.lg.jp)
- 広島市「収入基準」(city.hiroshima.lg.jp)
- 参議院 質問主意書 答弁書 第208回国会 内閣参質208第35号(sangiin.go.jp)