結論: 税の判定には入り、保険料の算定には入らない
退職金から計算する退職所得は、所得税・住民税では他の所得と分けて課税されます。一方で、配偶者控除・扶養控除の合計所得金額や医療費控除の足切りの判定には、退職所得の金額が足されます。国民健康保険料の所得割と、健康保険料・厚生年金保険料には、入らないと案内されています。
制度ごとの扱い(一覧)
| 制度 | 退職所得の扱い | 根拠 | 詳しいページ |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 原則として他の所得と分離して税額を計算する | 国税庁 No.1420 | 手取り計算・退職所得控除額の早見表 |
| 住民税 | 他の所得と区分して課税され、退職金を支払うときに会社が差し引く | 地方税法第328条・総務省 | 退職金と住民税 |
| 配偶者控除・扶養控除(控除される側の合計所得金額) | 入る。退職金の額ではなく退職所得の金額が足される | 所得税法第2条・国税庁 No.1191・No.1180 | 配偶者控除・扶養控除 |
| 医療費控除(10万円・5%の足切りの判定) | 入る。判定の合計額に退職所得金額が入る | 所得税法第73条・国税庁 No.1120・No.1420 | 医療費控除 |
| 国民健康保険料の所得割 | 入らない。確認した新宿区・大阪市・横浜市が「含みません」と明記 | 各市区の公式案内 | 国民健康保険料 |
| 健康保険料・厚生年金保険料 | 退職時にまとめて支払う退職手当は「報酬等」に当たらない例とされる。月給や賞与に上乗せする前払いは当たる | 日本年金機構の事例集 | 社会保険料 |
「入る」は、制度の判定に使う所得の合計に加わるという意味です。税額や保険料が必ず増えるという意味ではありません。
見るときの注意
- 配偶者控除・扶養控除と医療費控除は、退職金そのものではなく「(退職金-退職所得控除額)×1/2」で出る退職所得の金額が判定に入ります。勤続が長いほど控除額が大きく、金額は小さくなります。
- 国民健康保険料の決め方は自治体ごとに異なる部分があります。ここで確認したのは3つの市区だけなので、お住まいの市区町村の案内を確認してください。
- 役員としての勤続が5年以下の特定役員退職手当等や、勤続5年以下の短期退職手当等は、退職所得の金額の計算が変わります(短期退職手当等の計算)。
このページで扱わないこと
勤務先の健康保険の被扶養者になれるか、ふるさと納税の上限額、住宅ローン控除への影響は、一次資料での確認がそろっていないため載せていません。個別の判定は税理士・税務署・加入先の保険者へ確認してください。
自分の条件で試算する
受け取る退職金の手取りは手取り計算、金額の組み合わせごとの一覧は退職金の手取り早見表で確認できます。
国税庁タックスアンサー、e-Gov法令検索、日本年金機構、各市区の公式案内にもとづく一般的な説明です。個別の判定は断定できないため、税理士・税務署・加入先の保険者へ確認してください。
よくある質問
退職金を受け取ると、国民健康保険料は上がりますか。
確認した新宿区・大阪市・横浜市は、退職所得を所得割の計算に使う総所得金額等に含まないと案内しています。国民健康保険料の決め方は自治体ごとに異なる部分があるため、お住まいの市区町村の案内を確認してください。
退職金は配偶者控除や扶養控除の判定に入りますか。
入ります。ただし退職金そのものではなく、(退職金-退職所得控除額)×1/2で出る退職所得の金額が、控除される側の合計所得金額に足されます。
退職金は医療費控除の判定に影響しますか。
10万円・5%の足切りの判定の合計額に、退職所得の金額が入ります。勤続が長いほど退職所得控除額が大きく、退職所得の金額は小さくなります。
退職金は健康保険料・厚生年金保険料の対象になりますか。
日本年金機構の事例集では、退職時にまとめて支払う退職手当は「報酬等」に当たらない例とされています。月給や賞与に上乗せする前払いは当たります。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(nta.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.1191「配偶者控除」・No.1180「扶養控除」・No.1120「医療費を支払ったとき」
- e-Gov法令検索 所得税法(laws.e-gov.go.jp)
- 日本年金機構「報酬・賞与の取扱い」事例集(nenkin.go.jp)
- 新宿区・大阪市・横浜市の国民健康保険料の案内(各ページの出典欄に記載)