結論: 退職所得の金額も「合計所得金額」に入る
住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンの年末残高をもとに所得税から一定額を差し引く制度です。国税庁の案内では、その年の合計所得金額が2,000万円以下であることが適用の要件の1つとされています(令和4年以降に入居した新築等の場合、国税庁No.1211-1)。
この合計所得金額は、租税特別措置法が「所得税法第2条第1項第30号の合計所得金額」と定めているものです。所得税法はこれを、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額としています(e-Gov 所得税法第2条)。つまり、給料のほかに退職金を受け取った年は、退職所得の金額も合計所得金額に足されます。
足されるのは退職金の額そのものではなく、退職所得の金額(退職金から退職所得控除額を引いて2分の1にした額)です。退職所得控除額が大きい長い勤続の人ほど、退職金が多くても退職所得の金額は小さくなります。
判定は年ごとに行われます。租税特別措置法第41条は、合計所得金額が2,000万円以下である年について控除を認める書き方になっているため、退職金を受け取った年だけ線を超えた場合は、その年が対象から外れる形です。
判定に使う線(国税庁)
| 住宅の区分(令和4年以降に入居した新築等) | 合計所得金額の線 |
|---|---|
| 床面積50平方メートル以上の住宅 | 2,000万円以下 |
| 床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の特例居住用家屋・特例認定住宅等 | 1,000万円以下 |
表は国税庁No.1211-1(令和8年4月1日現在法令等)の要件です。中古住宅の取得や増改築は別のタックスアンサーで説明されており、このページでは確認していません。
退職金がいくらまでなら線の内側か(計算した目安)
退職所得の金額は「(退職金-退職所得控除額)×1/2」なので、退職金が「退職所得控除額+4,000万円」以下なら退職所得の金額は2,000万円以下です。1,000万円の線なら「退職所得控除額+2,000万円」以下です。同じ年に給与などほかの所得がないことが前提です。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 2,000万円以下になる退職金の上限 | 1,000万円以下になる退職金の上限 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 400万円 | 4,400万円 | 2,400万円 |
| 20年 | 800万円 | 4,800万円 | 2,800万円 |
| 30年 | 1,500万円 | 5,500万円 | 3,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 | 5,850万円 | 3,850万円 |
退職所得控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年を超えると800万円+70万円×(勤続年数-20年)です(国税庁No.1420)。
例: 勤続30年で退職金5,000万円を受け取り、同じ年の給与所得の金額が300万円だった場合、退職所得控除額は1,500万円なので、退職所得の金額は(5,000万円-1,500万円)×1/2=1,750万円です。給与所得の金額300万円と合わせた合計所得金額は2,050万円となり、2,000万円を超えるため、その年は線の外側になります。
特定役員退職手当等・短期退職手当等のとき
役員等としての勤続が5年以下の特定役員退職手当等は2分の1にしません。勤続5年以下の短期退職手当等は、退職金から退職所得控除額を引いた額のうち300万円を超える部分に2分の1を使えません(国税庁No.1420)。このとき退職所得の金額は上の表より大きくなり、線を超えやすくなります。該当するかの判断は分かれることがあるため、税理士または税務署へ確認してください。
このページで扱わないこと
控除額の計算(借入限度額や控除率)、中古住宅・増改築の要件、初年度の申告方法は扱いません。住宅ローン控除を受ける年の手続きは、税務署・税理士へ確認してください。
自分の条件で試算する
退職所得控除額は退職所得控除額の早見表、受け取る退職金の手取りは手取り計算で確認できます。ほかの制度との関係は次のページにまとめています。
- 制度全体の一覧: 退職金を受け取った年に影響する制度
- 配偶者控除・扶養控除: 退職金を受け取った年の配偶者控除・扶養控除
- 医療費控除: 退職金を受け取った年の医療費控除
よくある質問
退職金をもらった年は、住宅ローン控除に影響しますか。
影響する場合があります。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、その年の合計所得金額が2,000万円以下の年だけ受けられ、この合計所得金額には退職所得の金額も入ります。給与所得などと退職所得の金額の合計が2,000万円を超える年は、その年の控除を受けられません。
合計所得金額に足されるのは、退職金の額そのものですか。
いいえ。足されるのは退職所得の金額、つまり退職金から退職所得控除額を引いて2分の1にした額です。勤続が長く退職所得控除額が大きければ、退職金が多くても退職所得の金額は小さくなります。
勤続30年なら、退職金がいくらまでなら2,000万円の線の内側ですか。
同じ年にほかの所得がなければ、退職金が5,500万円以下なら退職所得の金額は2,000万円以下です(退職所得控除額1,500万円+4,000万円)。給与所得などがある年は、その分だけ上限が下がります。国税庁の式から計算した目安です。
床面積が50平方メートル未満の住宅でも同じ線ですか。
40平方メートル以上50平方メートル未満の特例居住用家屋・特例認定住宅等では、合計所得金額の線が1,000万円以下になります(国税庁No.1211-1)。該当するかは、住宅の建築確認の時期などで決まります。
自分が対象になるかは、どこで確かめられますか。
個別の判定は、税理士または税務署へ確認してください。退職所得控除額は早見表、手取りは手取り計算で試算できます。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」(nta.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(nta.go.jp)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法第41条(laws.e-gov.go.jp)
- e-Gov法令検索 所得税法第2条(laws.e-gov.go.jp)