出向・転籍のときの退職金(出向期間の負担と勤続年数の通算)

グループ会社への出向や転籍で、退職金の出向期間分を会社のどちらが負担するかと、転籍後の退職金で前の会社の期間が勤続年数に通算される条件を、国税庁の通達と施行令の原文で整理します。

結論:出向期間の負担は会社どうしの話、通算は転籍先の規程次第

出向期間の退職金:法人税基本通達の4つの定め

法人税基本通達の「転籍、出向者に対する給与等」の款は、出向先が出向元に退職給与の負担金を支出したときの損金の扱いを次のように定めています。

通達場面定めの内容
9-2-48出向期間中に定期的に支出する出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算した金額を、あらかじめ定めた負担区分に基づき定期的に出向元へ支出するなら、その事業年度の損金に算入する
9-2-49出向者が出向元を退職したとき出向期間に係る部分の金額を出向先が出向元へ支出したなら、出向先で引き続き勤務する場合でも、支出した日の属する事業年度の損金に算入する
9-2-50出向先が負担しないとき出向期間に係る部分の全部または一部を負担しなくても、負担しないことに相当な理由があるときは認める
9-2-51適格退職年金契約の掛金出向元が適格退職年金契約を結んでいる場合に、出向先が負担区分に基づいて掛金を出向元へ支出したなら、その事業年度の損金に算入する

いずれも出向先と出向元の法人税の取扱いで、出向者本人に支払う退職金の額を定めた規定ではありません。本人の退職金は、出向元(または転籍先)の退職給与規程と、出向契約・転籍の合意で決まります。

転籍のとき:前の会社と後の会社が分けて支給する場合

法人税基本通達9-2-52は、転籍者の退職給与について、転籍前の法人での在職年数を通算して支給することにしている場合を扱っています。転籍前の法人と転籍後の法人が支給した退職給与の額(相手方の法人を経て支給した金額を含む)は、それぞれの法人における退職給与とします。

つまり、転籍の際に前の会社が精算して払う形と、転籍先が退職時にまとめて払う形のどちらでも、会社側の処理はそれぞれの退職給与として行われます。本人にとっては、どちらの形かで受け取る時期と、勤続年数の数え方が変わります。

本人の税:前の会社の期間が勤続年数に入る条件

退職所得控除額は勤続年数で決まります。所得税法施行令第69条第1項第1号は、勤続年数を、退職手当等の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間で計算するとしています。例外として、勤務しなかった期間に他の者の下で勤務したことがあり、支払者がその退職手当等の計算の基礎とする期間に他の者の下での期間を含めて計算するときは、その期間を加算します(同号ロ)。

この加算の規定は、所得税基本通達30-10により、法律や条例の規定、または退職給与規程に、他の者の下で勤務した期間を含めた期間で退職手当等を計算する旨が明らかに定められている場合に限って適用されます。

転籍先の規程勤続年数の数え方
前の会社の期間を含めて計算する旨が明らかに定められている前の会社の期間を加算して勤続年数を計算する
そのような定めがない転籍先での勤続期間で計算する(通算の規定は適用されない)

勤続年数の一般的な数え方は退職金の勤続年数の数え方、控除額は退職所得控除の早見表で確認できます。

同じ年に前の会社と転籍先の両方から受け取ったとき

同じ年に2か所以上から退職手当等を受けると、それぞれについて計算した期間のうち最も長い期間で勤続年数を計算します。最も長い期間と重なっていない期間があるときは、その重ならない期間を加算します(所得税法施行令第69条第1項第3号)。複数の退職金が同じ年に出る場合の申告は、退職金の確定申告も確認してください。

出向や転籍の前に会社へ確認する項目

  1. 出向元との雇用契約が続くのか、出向元を退職して移るのか(出向命令書・転籍同意書の記載)。
  2. 出向期間中の退職金の積み立てや負担金を、出向先と出向元のどちらがどう負担するのか(出向契約)。
  3. 転籍先の退職給与規程に、前の会社での期間を含めて退職金を計算する定めがあるか。
  4. 転籍の時点で前の会社が退職金を精算して払うのか、転籍先の退職時にまとめて払うのか。
  5. 転籍時に払う場合、その支払いが退職手当等として扱われる条件を満たすか(税務署または税理士に確認)。

会社の合併・会社分割・事業譲渡による転籍は合併・事業譲渡・会社分割で転籍するときの退職金、制度の変更にあわせた打切り支給は制度を廃止して打切り支給するときの所得区分を参照してください。

よくある質問

出向している間の退職金は、出向先と出向元のどちらが負担しますか。

法人税基本通達9-2-48は、出向先が出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算した金額を、あらかじめ定めた負担区分に基づいて出向元に支出する場合、その金額を出向先の損金に算入するとしています。ただし、これは会社どうしの費用の扱いを定めた通達で、本人の退職金の額を決めるものではありません。

出向先が退職金を負担しないことはありますか。

法人税基本通達9-2-50は、出向先が出向期間に係る退職給与の全部または一部を負担しない場合でも、負担しないことに相当な理由があるときはこれを認めるとしています。負担の有無は出向契約などで決まるため、出向元の退職給与規程と出向契約を確認してください。

転籍したあと、前の会社での勤続年数は退職金の計算に通算されますか。

所得税基本通達30-10は、他の者の下で勤務した期間を含めて退職手当等を計算する扱いを、法律や条例、または退職給与規程にその旨が明らかに定められている場合に限って適用するとしています。通算されるかどうかは、転籍先の退職給与規程で確認してください。

転籍で前の会社と後の会社の両方から退職金が出るときの扱いは。

法人税基本通達9-2-52は、転籍前の在職年数を通算して退職給与を支給する場合、転籍前と転籍後の法人が支給した額を、それぞれの法人における退職給与とするとしています。本人の側では、同じ年に2か所以上から退職手当等を受けると、勤続年数は最も長い期間で計算します(所得税法施行令第69条第1項第3号)。

国税庁の法人税基本通達・所得税基本通達と所得税法施行令の原文にもとづく一般的な説明です(確認日 2026-10-13)。出向契約や退職給与規程の読み方、個別の税の扱いは事情により異なります。判断が分かれる場合は、税務署・税理士へ確認してください。

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