結論: 児童扶養手当は退職所得金額も入る。児童手当は所得制限なし
児童扶養手当は、受給する人の前年の所得が一定額以上だと、手当の全部または一部が支給されません(児童扶養手当法第9条)。この「所得」の計算について、児童扶養手当法施行令第4条は、総所得金額のほかに退職所得金額と山林所得金額などを合計すると定めています。つまり退職金を受け取った年の所得は、翌年の児童扶養手当の判定に使われます。
一方、児童手当は令和6年10月分から所得制限がなくなりました。e-Govの児童手当法でも、所得による支給制限を定めていた第5条は「削除」と表示されています。退職金を受け取っても、児童手当が所得を理由に止まることはありません。
いつの手当に影響するか
児童扶養手当は「前年の所得」で、その年の11月から翌年10月までの分が決まります(児童扶養手当法第9条)。たとえば令和8年に退職金を受け取った場合、その退職所得金額は、令和9年11月分から令和10年10月分までの判定に入ります。退職した年の手当がすぐ止まるわけではなく、影響が出るのは翌年の11月からの1年間です。この年の読み替えは条文からの整理で、実際の開始月は市区町村の案内で確認してください。
所得の計算の流れ(施行令第4条)
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 総所得金額、退職所得金額、山林所得金額、土地建物等の譲渡所得金額などを合計する |
| 2 | 養育費を受け取っている場合は、その8割相当額を加える |
| 3 | 合計から一律8万円を引く |
| 4 | 雑損控除・医療費控除・小規模企業共済等掛金控除・配偶者特別控除などに相当する額を引く(障害者控除などは別の定め額) |
| 5 | 出た額を、扶養親族等と生計を維持する児童の数に応じた「政令で定める額」と比べる |
手順5の線は、施行令第2条の4にあります。扶養親族等と生計維持児童がいないときは、手当の一部が停止され始める所得が69万円です。生計維持児童や加算対象の扶養親族等が1人いるごとに38万円(一定の場合は48万円・53万円)が上乗せされます。たとえば子1人を育てる受給者でほかに扶養親族がいなければ、69万円+38万円=107万円が一部停止の始まる所得です。全部停止になる所得は、同じ条の第2項で、扶養親族等と生計維持児童がないとき208万円、いるときはそれに加算した額と定められています。
退職金がいくらなら影響が出るか(計算した目安)
退職所得金額は、一般の退職金では「(退職金-退職所得控除額)×1/2」です(国税庁No.1420)。同じ年にほかの所得や控除がないと仮定すると、子1人で扶養親族がほかにいない場合の一部停止の線107万円に対し、退職所得金額が115万円(8万円を引いて107万円)に達すると、手当の一部が止まり始めます。退職所得金額が115万円になる退職金は「退職所得控除額+230万円」です。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 退職所得金額が115万円になる退職金 |
|---|---|---|
| 10年 | 400万円 | 630万円 |
| 20年 | 800万円 | 1,030万円 |
| 30年 | 1,500万円 | 1,730万円 |
退職所得控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年を超えると800万円+70万円×(勤続年数-20年)です(国税庁No.1420)。上の表は子1人・ほかに扶養親族なし・退職金以外の所得と控除なしという仮定の目安です。給与がある年、養育費を受け取っている年、医療費控除などがある年は結果が変わります。
例: 勤続20年で退職金1,000万円を受け取った場合、退職所得金額は(1,000万円-800万円)×1/2=100万円です。ほかの所得がなければ、100万円-8万円=92万円で、子1人の場合の線107万円を下回ります。
短期退職手当等・特定役員退職手当等のとき
勤続5年以下の短期退職手当等や、役員等としての勤続が5年以下の特定役員退職手当等は、2分の1の計算が変わり、退職所得金額が大きく出ることがあります(国税庁No.1420)。この場合は上の表より低い退職金で線に届きます。計算は特定役員退職手当等の退職所得の計算で確認できます。
このページで扱わないこと
特別児童扶養手当や、自治体独自の子ども向けの手当、高校の就学支援金、公営住宅の収入基準は、それぞれ別の制度で所得の計算が異なるため扱いません。ほかの税・社会保険への影響は退職金が翌年の制度にどう響くかの一覧、配偶者控除・扶養控除は退職金を受け取った年の配偶者控除・扶養控除で整理しています。国民健康保険料は退職金は国民健康保険料の算定に入るかを確認してください。
自分の条件で試算する
退職所得控除額は退職所得控除額の早見表、受け取る退職金の手取りは手取り計算で確認できます。個別の判定は、住所地の市区町村の児童扶養手当の窓口に確認してください。
よくある質問
退職金を受け取ると、児童扶養手当は減りますか。
所得の額によっては減る、または止まる場合があります。児童扶養手当は前年の所得で支給の可否が決まり、その所得の計算には退職所得金額が含まれます(児童扶養手当法施行令第4条)。退職金を受け取った年の翌年11月分から翌々年10月分までが対象です。退職所得控除額の範囲に収まり退職所得金額が0円なら、退職金が理由で増える所得はありません。個別の判定は住所地の市区町村の窓口で確認してください。
児童手当にも退職金による所得制限はありますか。
ありません。令和6年10月分から児童手当の所得制限はなくなりました。児童手当法のe-Gov掲載の本文でも、所得による支給制限を定めていた第5条は「削除」となっています。
所得に足されるのは、退職金の額そのものですか。
条文は「退職所得金額」を足すと書いています。一般の退職金では、退職金から退職所得控除額を引いて2分の1にした額です(国税庁No.1420)。勤続が長く控除額が大きければ、退職金が多くても退職所得金額は小さくなります。
養育費を受け取っている場合は、どう計算しますか。
児童扶養手当では、養育費を受け取っている場合、その8割相当額を所得に加えて判定します(施行令第4条)。退職所得金額と合わせて判定されます。
退職金を受け取った翌年以降はどうなりますか。
児童扶養手当は毎年、前年の所得で見直されます。退職金を受け取った年の所得が入るのは、その翌年11月分から翌々年10月分までの1年間で、その後は新しい年の所得で判定されます。
自分が受け取れるかどうかは、どこで確かめられますか。
個別の判定は、住所地の市区町村の児童扶養手当の窓口で確認してください。退職所得控除額は早見表、退職金の手取りは手取り計算で試算できます。
出典
- e-Gov法令検索 児童扶養手当法 第9条(laws.e-gov.go.jp)
- e-Gov法令検索 児童扶養手当法施行令 第2条の4・第4条(laws.e-gov.go.jp)
- e-Gov法令検索 児童手当法 第5条(削除)(laws.e-gov.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(nta.go.jp)
確認日: 2026年10月29日(e-Govの児童扶養手当法施行令第4条で退職所得金額が所得に含まれること、第2条の4の金額、児童手当法第5条の削除を原文で照合)