賞与がもらえるかは、就業規則の支給条件で決まる
賞与の請求権は、算定基準や算定方法が定められ、支給すべき金額が決まって初めて発生します。厚生労働省「確かめよう労働条件」は、賞与の支給日または一定の基準日に在籍する者だけに賞与を支給するという取扱いは有効とされている、と整理しています。この「支給日在籍要件」がある会社では、支給日より前に退職すると、評価期間中ずっと働いていても賞与が出ないことがあります。
同じページに載っている大和銀行事件(昭和57年10月7日最高裁判決)は、就業規則を「支給日に在籍している者に支給する」と改め、従業員へ周知したうえで、支給日の前に退職した人に賞与を支給しなかった事案です。会社ごとの定め方と周知の状況で結論が変わるため、退職日を決める前に、賞与の支給日と就業規則(賃金規程)の賞与の条文を確かめてください。
退職月に支払われる賞与と社会保険料
| 退職の仕方 | 資格喪失日 | 退職月に支払われた賞与の保険料 |
|---|---|---|
| 月末に退職 | 翌月1日 | かかる(退職月は被保険者期間のため) |
| 月の途中で退職 | 退職日の翌日(同じ月) | かからない(資格喪失月に支払われた賞与) |
日本年金機構は、資格取得月に支払われた賞与は保険料賦課の対象となり、資格喪失月に支払われた賞与は対象にならないとしています。資格喪失日は退職日の翌日です。会社が賞与から保険料を控除できるかについても、日本年金機構は「退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料控除の対象となりません」と案内しています。月末退職と月中退職の保険料の違い全体は退職日の選び方と社会保険料・住民税で説明しています。
保険料がかからない賞与でも、健康保険では、資格喪失日の前日までに支払われた賞与は標準賞与額として決定され、年度(4月1日から翌年3月31日)の累計額573万円の計算に含まれます。退職後に支払われる賞与の保険料の扱いは、確認できた資料に記載がなかったため、このページでは扱いません。年金事務所へ確認してください。
賞与と退職金は、税の区分が別
国税庁のタックスアンサーNo.2523は、賞与を、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与・ボーナス・期末手当などの名目で支給されるものとしています。源泉徴収は、賞与用の「算出率の表」で計算します。一方、退職金は退職所得です。国税庁のタックスアンサーNo.1420は、退職所得を、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得とし、(収入金額-退職所得控除額)×1/2で計算するとしています(特定役員退職手当等・短期退職手当等の例外があります)。
つまり、賞与は給与として、退職金は退職所得として、別々に税の計算がされます。退職金の手取りは手取り計算で試算できます。退職後に支払われる賞与や、名目が賞与でも退職に基因する支給がどちらに当たるかは、支給の実態で判断が分かれるため、税理士または税務署へ確認してください。
退職日を決める前に確認すること
- 就業規則(賃金規程)の賞与の条文: 支給日在籍の定めがあるか、対象期間と支給日はいつか。
- 賞与の支給日と退職日の前後関係: 月末退職か月中退職かで、退職月の賞与の保険料が変わる。
- 退職の手続き全体: 退職時の手続きチェックリスト。
よくある質問
賞与の支給日の前に退職すると、賞与はもらえませんか。
厚生労働省「確かめよう労働条件」は、賞与の支給日または一定の基準日に在籍する者だけに賞与を支給する取扱いは有効とされている、と整理しています。実際にもらえるかどうかは会社の就業規則や賃金規程の定めによるため、規程を確認してください。
賞与の支給日に在籍している者だけに支給する、という決まりが就業規則にない場合はどうなりますか。
賞与の請求権は、算定基準や支給額が定められて初めて発生するとされています。支給日在籍の定めが規程にあるか、実際にどう運用されてきたかで結論が分かれるため、会社の担当部署や労働基準監督署の総合労働相談コーナーに確認してください。
退職月に支払われた賞与にも、社会保険料はかかりますか。
日本年金機構は、資格喪失月に支払われた賞与は保険料賦課の対象にならないとしています。資格喪失日は退職日の翌日なので、月末に退職すると資格喪失日は翌月1日になり、退職月の賞与は保険料の対象になります。月の途中で退職した場合の退職月の賞与は、対象外です。
保険料がかからない賞与も、標準賞与額の累計に入りますか。
健康保険では、資格喪失月でも資格喪失日の前日までに支払われた賞与は標準賞与額として決定し、年度の累計額(573万円が上限)に含めると日本年金機構は示しています。転職した場合の累計の数え方は、加入先の保険者ごとです。
賞与と退職金は、税の計算で同じ扱いですか。
別の扱いです。国税庁は、賞与を定期の給与とは別に支払われる給与等とし、源泉徴収は賞与用の算出率の表で計算します。退職金は退職所得で、退職所得控除額を引いて2分の1にする計算です。
出典
- 厚生労働省「確かめよう労働条件 賞与不払い(裁判例)」(check-roudou.mhlw.go.jp)
- 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」(nenkin.go.jp)
- 日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」(nenkin.go.jp)
- 国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」(nta.go.jp)
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(nta.go.jp)