結論: 脱退一時金は退職所得として課税されます
財務省の資料は、確定給付企業年金制度や確定拠出年金制度に基づいて支払われる退職一時金等は、退職手当等とみなして退職所得として課税するとしています。国税庁No.1420も、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金は退職所得とみなされると説明しています。
退職所得は、ほかの所得と分けて計算する分離課税です。計算式は(収入金額-退職所得控除額)×1/2が退職所得の金額で、これに所得税の税率を掛けます。住民税は、財務省の資料では一律10%とされています。
脱退一時金とは
確定給付企業年金法41条の脱退一時金は、加入者の資格を失った人で、規約で定める要件を満たす人に支給されます。資格を失う場合には、実施事業所に使用されなくなったとき(退職など)や、厚生年金保険の被保険者でなくなったときなどがあります(同法27条)。
- 支給の方法: 脱退一時金は一時金として支給されます(同法42条)。
- 加入期間の要件: 老齢給付金を受ける要件を満たさない人に支給する場合、規約で3年を超える加入者期間を要件にしてはならないとされています(同法41条3項)。
- 支給の繰下げ: 要件を満たす人は、規約で定めるところにより、事業主等に支給の全部または一部の繰下げを申し出ることができます(同法41条4項)。
支給の要件や金額の決め方は、会社ごとの規約で決まります。ここで確認できるのは法律が定める枠だけなので、自分の制度の規約と加入者向けの案内を見てください。
税金の計算例: 脱退一時金900万円を勤続10年で受け取る場合
金額と年数は計算の説明のための仮定で、実在の制度の金額ではありません。本人が負担した掛金はないものとします。
| 項目 | 金額・計算 |
|---|---|
| 退職所得控除額 | 40万円×10年=400万円(勤続20年以下は1年につき40万円) |
| 退職所得の金額 | (900万円-400万円)×1/2=250万円 |
| 所得税(復興特別所得税を除く) | 250万円×10%-97,500円=152,500円(課税所得195万円超330万円以下の税率10%) |
| 住民税 | 250万円×10%=25万円(財務省の資料の一律10%) |
この計算は、退職所得の受給に関する申告書を支払者に出した場合の考え方です。出すかどうかで源泉徴収の方法が変わります(違いは退職所得の受給に関する申告書のページを見てください)。勤続5年以下で、退職所得控除額を引いた残りが300万円を超える部分は、2分の1にならない扱いがあります(財務省の資料)。勤続5年以下の人は、手取り計算で確かめてください。
本人が掛金を負担していたとき
国税庁No.1420は、確定給付企業年金規約に基づいて支給される退職一時金などで、従業員自身が負担した保険料や掛金がある場合、その支給額から負担した金額を差し引いた残額を退職所得の収入金額とするとしています。本人の負担があった制度かどうかは、規約と加入者向けの案内で確認します。
年金で受け取る・他制度へ移すとき
確定給付企業年金は、老齢給付金などを年金で受け取る仕組みもあります。年金として受け取る場合は、一時金とは別の課税になります。国税庁No.1600は、確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金を、公的年金等の雑所得となる主なものに挙げています。
| 受け取り方 | 税の分類(国税庁・財務省の資料) |
|---|---|
| 脱退一時金を一時金で受け取る | 退職所得(退職手当等とみなされる) |
| 確定給付企業年金の年金として受け取る | 公的年金等の雑所得(No.1600) |
また、確定給付企業年金法には、中途脱退者が脱退一時金相当額を、ほかの確定給付企業年金(81条の2)、企業型確定拠出年金(82条の3)、企業年金連合会(91条の19)へ移す仕組みがあります。移せる条件や移したあとの給付は、制度ごとの規約と移換先で決まります。移換した場合の税の扱いは、このページでは確認できた範囲に含めていません。支給の案内が届いたら、一時金を受け取る前に事業主等の担当部署に確認してください。
手続きで確認する4つの点
- 支給の要件と金額: 自分が脱退一時金の対象か、金額がいくらかを、規約と、会社や企業年金からの支給額の案内で確認します。
- 選べる受け取り方: 一時金のほかに、年金や移換が選べるかを担当部署に聞きます。
- 申告書: 退職所得の受給に関する申告書を支払者に出すかどうかで、源泉徴収の額が変わります。
- 源泉徴収票: 支払を受けたら、退職所得の源泉徴収票を保管します(退職所得の源泉徴収票の見方)。
このページで扱わないこと
個別の制度の規約、移換した場合の税の扱い、複数の退職金を同じ年に受け取る場合の計算、控除額が重複する場合の調整(退職所得控除の重複期間の調整)は扱いません。個別の税額は断定できないため、税務署または税理士に確認してください。
関連するページ
- 年金で受け取るときの税金: 退職金を年金で受け取るときの税金
- 企業年金の給付を減らす場合: 確定給付企業年金の給付減額の条件と手続き
- 退職所得控除の金額: 退職所得控除の早見表
- 企業型確定拠出年金からの移換: 企業型確定拠出年金の退職時の移換
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(国税庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係(国税庁)
- 財務省「退職所得の課税方式」(財務省)
- e-Gov法令検索 確定給付企業年金法 第27条・第41条・第42条・第81条の2・第82条の3・第91条の19(laws.e-gov.go.jp)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令 第72条(laws.e-gov.go.jp)
よくある質問
確定給付企業年金の脱退一時金は、退職所得になりますか。
財務省の資料は、確定給付企業年金制度に基づき支払われる退職一時金等を退職手当等とみなし、退職所得として課税するとしています。国税庁No.1420も、確定給付企業年金規約に基づく退職一時金などを退職所得の対象として説明しています。
脱退一時金は誰がもらえますか。
確定給付企業年金法41条は、加入者の資格を喪失した人で、規約で定める要件を満たす人に支給するとしています。老齢給付金を受ける要件を満たさない人への支給では、規約で3年を超える加入者期間を要件にしてはならないとされています。
脱退一時金の代わりに、年金や他の制度へ移すことはできますか。
法律には、中途脱退者が脱退一時金相当額を他の確定給付企業年金や企業型確定拠出年金、企業年金連合会へ移す仕組みがあります。移せるかどうかは、制度の規約と移換先の受け入れで決まるため、事業主等の担当部署に確認してください。
本人が掛金を負担していた場合、税金はどうなりますか。
国税庁No.1420は、従業員自身が負担した保険料や掛金がある場合、その支給額から負担した金額を差し引いた残額を退職所得の収入金額とするとしています。