支給は法律では決まらず、会社の定めで決まる
退職金は、会社の退職金規程や労働契約で支給の条件と額を定める制度です。パートや契約社員だから必ず支給される、または必ず支給されない、という決まりはありません。就業規則や労働条件通知書で、対象となる雇用形態と勤続年数の条件を確認します。
厚生労働省のガイドラインでの退職手当の扱い
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」は、正社員と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)の間に待遇差があるとき、どの差が不合理かを示す指針です。同省の概要資料には、退職手当について次の趣旨が書かれています。
| 項目 | 資料の内容 |
|---|---|
| 退職手当の性質・目的 | 労務の対価の後払い、功労報償などの様々な性質・目的が含まれうる |
| 不合理と認められうる場合 | その性質・目的が非正規雇用の人にも妥当するのに、正社員との職務の内容などの違いに応じた均衡のとれた退職手当を支給せず、基本給を高くするなどの見合いの事情もないとき |
| ガイドラインにない待遇 | 記載がない待遇や具体例に当たらない場合でも、待遇差が不合理と認められる可能性がある |
改正の適用日など最新の内容は、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインのページで原文を確認してください。
最高裁の判決(令和2年10月13日)
契約社員Bとして駅の売店で働いた人が、正社員との退職金の差を争った事件で、最高裁第三小法廷は令和2年10月13日、退職金を支給しない相違は不合理と認められるものに当たらないと判断しました(令和元年(受)第1190号、第1191号)。判決は、正社員の退職金が賃金の後払いや功労報償などの複合的な性質を持つことを踏まえ、両者の職務の内容や配置の変更の範囲の違い、正社員への登用制度があったことなどの事情を考慮しています。
この判断は、その会社のその事案の事情にもとづくもので、非正規雇用の退職金の不支給が常に問題にならないという意味ではありません。判決の対象は当時の労働契約法20条です。
退職金を受け取ったときの税の扱い
国税庁のタックスアンサーNo.1420は、退職所得を、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得と説明しています。雇用形態で扱いを分ける記載はありません。受け取った退職手当等は、次の式で退職所得の金額を計算します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 退職所得の金額 | (収入金額-退職所得控除額)×1/2 |
| 退職所得控除額 | 勤続年数20年以下は40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
| 勤続年数5年以下の場合 | 役員等以外の勤続年数が5年以下の人の退職金は短期退職手当等となり、控除後の額のうち300万円を超える部分は2分の1計算の対象外 |
勤続年数の数え方は勤続年数の数え方、控除額の金額は退職所得控除額の早見表、5年以下の人の計算は短期退職手当等のページで確認できます。
自分の条件で試算する
退職金が支給されると分かったら、手取り計算で税引後の手取りを試算できます。受け取るときの申告書の出し方は退職金の手続きチェックリストを参照してください。
よくある質問
パートや契約社員には、退職金は必ず支給されますか。
法律で一律に支給が決まっているわけではありません。支給の有無と額は、会社の退職金規程や労働契約で決まります。ただし、正社員にだけ支給し、非正規雇用の人に支給しない差が不合理と認められる場合があるため、個別の事情で判断が分かれます。
退職金がないことは、同一労働同一賃金に違反しますか。
一律には言えません。厚生労働省のガイドラインは、退職手当に後払いや功労報償などの性質・目的があり、それが非正規雇用の人にも当てはまるのに均衡のとれた退職手当を支給しない場合、不合理と認められうるとしています。最高裁は令和2年10月13日の判決で、特定の事案について、退職金を支給しない相違は不合理とは認められないと判断しました。
パートや契約社員がもらった退職金にも、退職所得控除は使えますか。
国税庁のタックスアンサーは、退職所得を退職により勤務先から受ける退職手当などの所得と説明しており、正社員に限る記載はありません。退職手当等として支払われるものは、退職所得控除額を差し引いて計算します。個別のお金が退職手当等に当たるかどうかは、税理士または税務署へ確認してください。
勤続年数が短いパートの退職金は、税の扱いが変わりますか。
役員等以外として勤務した期間で数えた勤続年数が5年以下の人の退職金は、短期退職手当等として、退職所得控除額を引いた額のうち300万円を超える部分に2分の1計算が適用されません。詳しくは短期退職手当等のページを参照してください。
派遣社員の退職金は、雇用主である派遣元の制度で決まります。労使協定方式での退職金の確保方法は派遣社員の退職金で確認できます。
出典
- 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドラインの概要」(mhlw.go.jp)/同一労働同一賃金ガイドライン
- 最高裁判所 第三小法廷 令和2年10月13日判決(courts.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(nta.go.jp)