結論:30日前に予告するか、不足する日数分の平均賃金を払う
労働基準法第20条は、会社が労働者を解雇するときに、少なくとも30日前に予告することを求めています。予告が30日前に間に合わないときは、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。この支払いが解雇予告手当です。予告の日数が30日に満たない場合は、不足する日数分の平均賃金を払います。税の面では、予告手当は退職所得とされる退職手当等に当たります(国税庁タックスアンサーNo.2736)。
| 解雇の予告 | 支払う平均賃金 | 根拠 |
|---|---|---|
| 30日以上前に予告する | 予告手当は不要 | 労働基準法第20条第1項 |
| 予告なしで即時に解雇する | 30日分以上 | 労働基準法第20条第1項 |
| 解雇日の10日前に予告する | 20日分(20日×平均賃金) | 厚生労働省の解説 |
予告の数え方と支払い時期
- 30日は暦日:予告をした日は数えず、翌日から数えます。厚生労働省のQ&Aは、9月30日付の解雇なら遅くとも8月31日に予告が必要としています。
- 支払い時期:予告をしない即時解雇の場合の30日分の平均賃金は、解釈例規(昭23.3.17基収第464号)で、解雇の申渡しと同時に支払うものとされています。
- 予告の方法:口頭の予告も有効ですが、厚生労働省はトラブルを避けるため書面での通知が望ましいとしています。
- 予告期間中の賃金:予告期間中も、働いた日や年次有給休暇を取った日の賃金は支払われます。
平均賃金の求め方
平均賃金は、算定すべき事由が起きた日以前の3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日)で割った金額です(労働基準法第12条第1項)。厚生労働省のリーフレットは、賃金の締切日がある場合は直前の締切日から数える例を挙げ、賞与などは除いた賃金総額で計算するとしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本の式 | 直前3か月の賃金総額 ÷ その期間の総日数 |
| 日給・時給・出来高払いの場合 | 賃金総額÷その期間中に労働した日数の60%が下限(法第12条第1項第1号) |
| 算入しない賃金 | 臨時に支払われた賃金、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金など(同条第4項) |
| 期間から除く日 | 業務上の療養のための休業、産前産後休業、使用者の責めに帰すべき休業、育児・介護休業、試みの使用期間(同条第3項) |
予告手当の額は、会社が算定した平均賃金に支払う日数をかけたものです。賃金明細で直前3か月の総支給額と日数を確かめると、会社の計算が上の式に沿っているか見当がつきます。
予告が不要になる場合と、解雇が禁止される期間
次の場合は、30日前の予告も予告手当も不要とされています(労働基準法第20条第1項ただし書、第21条)。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| やむを得ない事由で事業の継続が不可能 | 天災事変など。労働基準監督署長の認定が必要 |
| 労働者の責めに帰すべき事由による解雇 | 労働基準監督署長の認定が必要。懲戒解雇という名称だけでは足りない |
| 日々雇い入れられる者 | 1か月を超えて引き続き使用された場合は予告の対象 |
| 2か月以内の期間を定めて使用される者 | 所定の期間を超えて引き続き使用された場合は予告の対象 |
| 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者 | 所定の期間を超えて引き続き使用された場合は予告の対象 |
| 試みの使用期間中の者 | 14日を超えて引き続き使用された場合は予告の対象 |
厚生労働省のリーフレットは、労働者に非があるからといって、すぐに解雇の手続きを省けるわけではなく、労働基準監督署長の認定を受けた場合に限って手続きなしで解雇できるとしています。また、業務上の負傷・疾病で療養のために休業する期間とその後30日間、産前産後の休業期間とその後30日間は、原則として解雇が禁止されています(第19条)。懲戒解雇と退職金の関係は懲戒解雇で退職金が出ないかで整理しています。
解雇予告手当の税の扱い
国税庁タックスアンサーNo.2736は、30日前までに予告しないで解雇する場合に使用者から支払われる予告手当を、退職所得とされる退職手当等に当たると説明しています。退職手当等は、退職手当等の金額から退職所得控除額を引き、その2分の1が課税対象です(No.1420)。控除額は退職所得控除額の早見表で調べられます。
予告手当の名目で支払われても、解雇の際に別に「解決金」が合意される場合は、所得区分が支払の趣旨で分かれます。解雇・退職勧奨の解決金の税と退職手当等とみなされる一時金のページで整理しています。
受け取る前後に確かめる点
- 予告の日付と解雇日:予告が書面か口頭か、解雇日までの暦日が30日あるか。
- 手当の日数と平均賃金の額:不足日数分を払っているか、賃金明細の3か月分と照らす。
- 支払い日:即時解雇なら解雇の申渡しと同時か。
- 解雇理由証明書:労働者は、退職後または解雇予告を受けている期間中に、解雇の理由を記載した証明書を請求できます(労働基準法第22条)。厚生労働省は、会社はすぐに交付しなければならないとしています。
- 離職票の離職理由:解雇が理由の離職は、失業手当で特定受給資格者の範囲に入ることがあります。離職票の見方は離職票の見方、給付の流れは失業手当はいつ・いくら、範囲は特定受給資格者の判定を見てください。
- 支払われないとき:予告手当が払われない場合、裁判所は労働者の請求により、未払金と同一額の付加金の支払いを命じることができます(第114条)。請求は違反の時から5年以内です。具体的な進め方は労働基準監督署などへ相談してください。
よくある質問
解雇予告手当は、何日分もらえますか。
予告なしで即時に解雇されたときは30日分以上の平均賃金です。予告の日数が30日に満たないときは、不足する日数分です。たとえば解雇日の10日前に予告があれば、20日分の平均賃金が目安になります(厚生労働省の解説)。
30日前の予告があれば、手当はもらえませんか。
解雇日の30日以上前に予告があれば、予告手当は発生しません。ただし予告期間中も、働いた日や年次有給休暇を取った日の賃金は支払われます。
平均賃金は、どのように計算しますか。
算定すべき事由が起きた日以前の3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割ります(労働基準法第12条)。賞与など臨時に支払われた賃金は含めません。日給・時給などの場合は、労働日数で割った額の60%が下限です。
解雇予告手当に税金はかかりますか。
国税庁タックスアンサーNo.2736では、予告手当は退職所得とされる退職手当等に当たります。退職手当等の金額から退職所得控除額を引き、その2分の1が課税対象になります。個別の計算は税理士または税務署へ確認してください。
懲戒解雇なら、予告手当は払われませんか。
懲戒解雇という名称だけでは、予告手当は不要になりません。厚生労働省は、労働者の責めに帰すべき事由による解雇で、労働基準監督署長の認定を受けた場合に限り、解雇の手続きなしで解雇できるとしています。
試用期間中の解雇でも、予告手当は必要ですか。
試みの使用期間中の人は予告の規定の対象外ですが、14日を超えて引き続き使用された場合は予告の対象になります(労働基準法第21条)。
出典
- 労働基準法 第12条・第19条・第20条・第21条・第22条・第114条(e-Gov法令検索)(laws.e-gov.go.jp)
- 厚生労働省 労働契約の終了に関するルール(www.mhlw.go.jp)
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 リーフレットシリーズ労基法20条「解雇する際の手続き」(www.mhlw.go.jp)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「解雇予告の期間&手当の計算方法と支払時期を教えてください。」(www.check-roudou.mhlw.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.2736「解雇予告手当や未払賃金立替払制度に基づき国が弁済する未払賃金を受け取ったとき(退職所得)」(www.nta.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(www.nta.go.jp)