転職で退職金を引き継ぐ仕組みの比較(中退共・企業年金・DC)

転職時に退職金や企業年金の資産を持ち運べるかは、前の勤め先の制度と転職先の制度の組み合わせで決まります。厚生労働省の「ポータビリティ」の表と、勤労者退職金共済機構(中退共)の公式資料で整理します。

持ち運べる組み合わせの早見表

厚生労働省によると、企業年金・iDeCo・中小企業退職金共済(中退共)では、離転職や勤め先の制度変更のときに、積み立てた資産を他の制度へ持ち運べる場合があります。これを「ポータビリティ」といいます。表の縦が転職前の制度、横が移す先です。

転職前の制度 \ 移す先DB企業型DCiDeCo通算企業年金中退共
DB(確定給付企業年金)○(転職先の規約による)○○○△(合併等のみ)
企業型DC○(転職先の規約による)○○○△(合併等のみ)
iDeCo○(転職先の規約による)○対象外××
通算企業年金○(転職先の規約による)○○対象外×
中退共△(合併等のみ)△(合併等のみ)××○

○は個人の申出で移換、△は事業主の手続きで移換、×は移換不可です。「転職先の規約による」は、移す先のDBが受け入れを定めている場合に限る意味です。移す先の企業型DCは、転職先が導入している場合に限ります。DBから別のDBへは、個人単位の移換のほかに、制度移行として事業主の手続きで移す方法もあります(前の勤め先のDBの規約による)。

この表で目立つのは、中退共の行と列です。中退共は、転職先も中退共のときだけ通算でき、転職先が企業年金やiDeCoでも引き継げません。

仕組みごとの比較

項目中退共の通算企業年金(DB)の移換企業型DCの移換
引き継げる転職先中退共に加入している企業(特定退職金共済団体との通算契約があれば特退共も可)DB(規約による)、企業型DC、iDeCo、通算企業年金DB(規約による)、企業型DC、iDeCo、通算企業年金
転職先が企業年金のとき引き継げない転職先が受け入れる場合に可能転職先に企業型DCがあれば可能
主な条件掛金納付12月以上、退職後3年以内に転職先で加入、退職金を未請求前の勤め先のDB規約と転職先の規約の定めによる資格喪失から6か月以内に手続き
期限を過ぎたとき通算できない規約による国民年金基金連合会へ自動移換され、運用されず手数料がかかる
手続きの主体通算の申出(会社都合で12月未満のときは厚生労働大臣の認定が必要)個人の申出が基本個人の申出

中退共の通算:転職先も中退共のとき

勤労者退職金共済機構によると、中退共に加入している企業から別の加入企業へ転職した場合、次の条件を満たして通算を申し出れば、前の企業での掛金納付実績をそのまま新しい契約に通算できます。

会社都合などで転職した場合は、掛金納付月数が12か月未満でも通算できます。ただし、退職の事由を証明する厚生労働大臣の認定が必要です。

中退共には、ほかに次の通算があります。

中退共と企業年金の間の移換が認められる2つの場合

勤労者退職金共済機構のQ&Aでは、離転職の場合、中退共と企業年金(DBまたは企業型DC)との間の資産移換はできないと明記されています。移換できるのは、次の2つの場合だけです。

  1. 中退共に加入している企業が、中小企業の範囲を超えた場合(中退共から企業年金へ)
  2. 中退共の実施企業と企業年金の実施企業が平成30年5月1日以降に合併・分割・事業譲渡等を行い、1つの企業に両方の従業員グループが併存している場合(どちらか一方への移換)

転職先に企業年金しかないときは、前の勤め先の中退共の退職金を請求して受け取ることになります。受け取った退職金の税金は、手取り計算や中退共の請求手続きのページで確認できます。

企業年金・DCの移換:転職先の制度で選択肢が変わる

厚生労働省によると、DBと企業型DCからは、iDeCo、通算企業年金、転職先に制度があれば企業型DC、転職先のDBが条件を満たせばDBへ持ち運べます。iDeCoからは、転職先の企業型DCかDBへ移せますが、通算企業年金には移せません。通算企業年金からは、iDeCo、企業型DC、DBへ移せます。

決める前に確かめること

  1. 前の勤め先の制度が、中退共・DB・企業型DCのどれか(退職金規程、就業規則、給与明細で確認)。
  2. 転職先の制度が、中退共・DB・企業型DC・退職金なしのどれか(入社時の説明で確認)。
  3. 中退共は退職後3年以内、企業型DCは資格喪失後6か月以内、通算企業年金は制度ごとの期限があること。
  4. 引き継ぐか一時金で受け取るかで、税金の扱いと手取りが変わること。

どちらが有利かは、加入期間、他の所得、転職先の制度により異なり、一律には言えません。個別の判断は、加入している制度の窓口、勤労者退職金共済機構、企業年金連合会、税務署へ確認してください。

よくある質問

転職すると、中退共の退職金は引き継げますか。

転職先も中退共に加入している場合は、掛金が12月以上納付されていること、退職後3年以内に新しい企業で中退共に加入すること、退職金を請求していないことの3つを満たして申し出れば、掛金の納付実績を新しい契約に通算できます。

中退共の退職金を、転職先の企業年金や企業型DCに移せますか。

勤労者退職金共済機構によると、離転職の場合、中退共と企業年金(確定給付企業年金・企業型確定拠出年金)との間の資産移換はできません。移せるのは、加入企業が中小企業の範囲を超えた場合と、平成30年5月1日以降に合併等を行った場合に限られます。

DBや企業型DCの資産は、iDeCoに移せますか。

厚生労働省の表では、DBと企業型DCのどちらからも、個人の申出でiDeCoと通算企業年金へ移せます。転職先に企業型DCがあれば企業型DCへも移せます。ただし中退共へは移せず、iDeCoから通算企業年金への移換もできません。

企業型DCを退職後に何も手続きしないとどうなりますか。

6か月以内に移換や脱退一時金の請求をしないと、資産は国民年金基金連合会へ自動移換されます。自動移換中は運用されず、管理手数料の負担があり、老齢給付金の受給要件となる期間にも含まれません。

厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」、勤労者退職金共済機構「通算制度」「Q&A 4-3-3・4-3-4」にもとづく一般的な説明です(確認日: 2026-10-14)。個別の可否は、加入している制度の窓口で確認してください。

出典