結論:応じる義務はなく、応じる前に書面で条件を確かめる
厚生労働省は、退職勧奨を「辞めてほしい」と退職を勧めることで、会社が一方的に契約を解除する解雇とは違うと説明しています。労働者が自由な意思で応じる場合は問題になりませんが、自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害にあたるとされる場合があります。応じて退職した場合は、自己都合による退職にはならないとも書かれています。応じる前には、割増退職金の額と税、離職票の理由、失業手当への影響を、書面で確かめておくと後で困りにくくなります。
3つの制度の違い
| 項目 | 退職勧奨 | 希望退職の募集 | 選択定年・早期退職優遇制度 |
|---|---|---|---|
| きっかけ | 会社から個別に退職を勧められる | 人員整理などで、会社が期間を区切って募集する | 従来から設けられた制度に、本人が応募する |
| 離職票の離職理由の区分 | 4(事業主からの働きかけ) | 4(事業主からの働きかけ) | 3(労働契約期間満了等) |
| 失業手当での扱い(ハローワークの基準) | 特定受給資格者の範囲に含まれる | 特定理由離職者の範囲に含まれることがある | 従来から恒常的に設けられた「早期退職優遇制度」等への応募は、特定受給資格者に該当しない |
ハローワークの基準では、特定受給資格者の範囲に「事業主から直接もしくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」があり、従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しないとされています。また特定理由離職者の範囲には、「企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等」が挙げられています(ただし特定受給資格者の範囲の退職勧奨に当たらないものに限る)。離職票の区分は離職票の見方、範囲の全体は特定受給資格者の判定、給付の流れは失業手当はいつ・いくらで確認できます。
実際は事業主からの退職勧奨なのに、自己都合の退職とされている場合は、ハローワークに相談すると、ハローワークが事実関係を調査して離職理由を判定します。
割増退職金の税の扱い
国税庁タックスアンサーNo.2725では、退職所得として課税される退職手当等は、退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与とされています。そのため、退職勧奨や希望退職に応じたときの割増退職金や退職加算金が、これに当たるかどうかは支払の趣旨で決まります。退職手当等なら、金額から退職所得控除額を引き、その2分の1が課税対象です(No.1420)。名称だけで区分は決まらないため、通常の退職金と別に「解決金」などが払われる場合は解決金の税のページを見てください。控除額は退職所得控除額の早見表、手取りの目安は手取り計算で試算できます。
応じる前に書面で確かめる項目
- 割増退職金の額と算定式:通常の退職金とは別の加算か、規程にある式か(退職金規程の読み方)。
- 支払い時期と支払い名目:退職日までに払われるか、退職金か解決金か。源泉徴収の扱いも合わせて確かめる。
- 募集の期間と応募条件:希望退職の募集要綱があるか、応募の締切、対象者の範囲。
- 離職票の離職理由:事業主からの働きかけ(退職勧奨・希望退職の募集)として記載されるか。希望退職募集要綱の写しや応募の事実が分かる資料を手元に残す。
- 退職日と有給休暇の扱い:退職日、残っている年次有給休暇の取り扱い。
- 誓約書の有無:退職時に秘密保持や競業避止の誓約書を求められるか(誓約書の確認点)。
- 社会保険と年金:退職後の健康保険の選び方(退職後の健康保険の比較)と国民年金への切り替え(国民年金への切り替え)。
- 書類:合意書や条件通知を受け取り、署名する前に内容を確かめる。必要な書類は退職時の書類一覧と退職手続きのチェックリストで整理しています。
解雇として扱われる場合は、30日前の予告か予告手当が必要です(解雇予告手当の条件と税)。会社の事情による解雇は、人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、手続きの妥当性に照らして有効かどうかが厳しく判断されます(厚生労働省)。
よくある質問
退職勧奨には、応じなければなりませんか。
厚生労働省は、退職勧奨を会社が一方的に契約を解除する解雇とは違うものと説明しています。労働者が自由な意思で応じる場合は問題となりませんが、自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。個別の判断は労働基準監督署や専門家へ確認してください。
退職勧奨に応じて辞めると、自己都合になりますか。
厚生労働省は、退職勧奨に応じて退職した場合は、自己都合による退職とはならないとしています。離職票の離職理由は、事業主からの働きかけの区分になることがあります。
希望退職や早期退職優遇制度に応募すると、失業手当はどうなりますか。
ハローワークの基準では、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度等への応募は特定受給資格者に該当しません。企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した人は、特定理由離職者の範囲に挙げられています。どちらに当たるかはハローワークが判断するため、離職票を持って相談してください。
退職勧奨や希望退職で受け取る割増退職金に、税金はかかりますか。
退職しなければ支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われる給与は、退職所得とされる退職手当等です(国税庁タックスアンサーNo.2725)。退職手当等の金額から退職所得控除額を引き、その2分の1が課税対象です。支払の趣旨で区分が変わるため、個別の判断は税理士または税務署へ確認してください。
離職票の理由が実際と違うときは、どうすればよいですか。
実際は事業主からの退職勧奨なのに自己都合とされている場合などは、ハローワークに相談すると、ハローワークが事実関係を調査して離職理由を判定します。募集要綱の写しなど、応募の事実が分かる資料を手元に残しておくと役立ちます。
出典
- 厚生労働省 労働契約の終了に関するルール(退職勧奨について)(www.mhlw.go.jp)
- ハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(www.hellowork.mhlw.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.2725「退職所得となるもの」(www.nta.go.jp)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(www.nta.go.jp)